佐野文香の卒論

要旨


人は,ポジティブな記憶を想起することでネガティブな気分を調整する事がある。
この現象は,記憶区分の中でもより自己に密接し,エピソード,感情的情報,事実的情報など様々な情報を含んでいる"自伝的記憶"の機能の一つとして,近年研究が進められている。
本研究ではこの自伝的記憶の性質を詳細さ,重要さ,ポジティブさという3つの観点から捉え,また気分緩和動機の影響を考慮した上で,自伝的記憶想起が気分緩和へ及ぼす影響についての包括的なモデルを構成した。
そして,近年の自伝的記憶における性差についての研究,感情の多様性についての研究で得られた知見をふまえ,このモデルを気分の種類,性別に検討した。
結果,男性においては詳細な記憶を想起することで活気度が増大し,疲労度が低減することが示された。
他方,女性においては重要な記憶を想起することで活気度が増大し,ポジティブな記憶を想起することで怒り度,不安度が低減する事が示された。
ネガティブ気分を多元的に検討していくことの必要性,自伝的記憶と感情における性差という観点から考察を行った。

キーワード:自伝的記憶,気分緩和動機,感情の種類,性差
This template made by
素材屋HP素材のおすそわけ。