【方法】
1.調査対象
A県・B県・C県内の小学校3年生235名、4年生254名の計489名を対象に質問紙調査を行った。回答に不備があったものと、「1番身近なおうちの人」で兄弟を選択した者を除外し、3年生193名(男子85名、女子108名)、4年生208名(男子94名、女子114名)、不明1名の計402名(男子179名、女子222名、不明1名)で分析を行った。
有効回答率は82.0%、平均年齢は9.16歳、標準偏差は0.73であった。
2.調査時期
2013年11月上旬〜11月下旬
3.手続き
A県・B県の小学校については、質問紙をクラスごとに分けて封筒に入れ、郵送し、各クラスの担任の教師に実施し、返送してもらった。C県の小学校については、C校校長に質問紙をクラスごとに分けて封筒に入れて直接渡し、各クラスの担任の教師に実施してもらい、実施後C校に質問紙を回収しに行った。教示については、教示例を書面にて各教師に示した。
4.調査内容
質問紙は以下の3つの尺度によって構成された。また、フェイスシートにおいて、性別、学年、年齢、兄弟の有無について尋ねた。なお、スキンシップ尺度と親への愛着尺度は、子どもの家庭環境などを考慮し、「1番身近な人おうちの人」を母親・父親・祖母・祖父・その他の5人の中から1人だけを選択させ、その人を想定して回答するよう教示した。
(1) スキンシップ尺度
浜崎・森野・田口(2008)で作成された幼児期の子どもを持つ親用のスキンシップの項目を参考に、18項目で作成した。項目作成に際しては「身体の直接ふれあう身体的接触行動、または身体がふれ合っていなくても、親から子どもにはたらきかけたり、子どもと一緒に何かをしたりすることで“両者の関係が繋がっている”と子どもに実感させることのできる心的接触行動」(浜崎・森野・田口, 2008)というスキンシップの定義のもと小学校中学年の発達段階を考慮した。幼児用の項目を精査し、小学生3・4年生ではしないであろう「子どもの手を持って、でんぐりがえしをさせる」、「子どもにたかいたかいをする」などの項目を削除し、幼児版にはなかった「いっしょにスポーツをする」、「いっしょにゲーム(トランプ・テレビゲームなど)をして遊ぶ」などの項目を小学生版に新たに追加した。
小学生版スキンシップ尺度は「いっしょにねる」「ぎゅっとだきしめてもらう」などの【交流】、「おふろでかみや体を洗ってもらう」「ぬれたかみをふいたりかわかしてもらう」などの【世話】、「ふざけあって遊ぶ」「いっしょに歌を歌う」などの【遊び・活動】の3つのカテゴリーで構成した。現在のスキンシップの量を測定するために使用し、「ほとんどしない」から「よくする」の4件法で測定した。
小学校4年生から5年生の女子児童4名に作成した小学生版スキンシップ尺度の各項目に回答してもらい、内容および表現が児童用に適しているかの検討が行われた。また、心理学専攻の学生や院生、心理学を専門とする大学教員や小学校教員らによって検討した結果、尺度の内容妥当性が確認された。
(2) 愛着尺度
「親への愛着尺度(姜・河内, 2010)」の中から2項目のみで構成され、下位尺度として不十分であった外的帰属安心を除外した。さらに、親に対する愛着を尋ねる尺度であったため、親の部分を「1番身近なおうちの人」と修正し使用した。
3下位尺度16項目で構成されており、「私が授業でうまく発表ができなかった時、[1番身近なおうちの人]は元気づけてくれると思う」などの困った時や落ち込んでいる時に「おうちの人」が自分にどのようにしてくれるか予測でき「おうちの人」に安心感をもつ内容が含まれる【内的帰属安心】、「仲間とうまくいかなくて悲しい時、[1番身近なおうちの人]に話しかける」などの困った時や落ちこんでいるときに自分から「おうちの人」に気持ちを伝えたり、自分から「おうちの人」に近付き、特に自分の気持ちを「おうちの人」に表出したりするという内容が含まれている【親密・表出】、「とび箱などの苦手なことができなくて困った時、[1番身近なおうちの人]に心配をかけないように明るくふるまう」などの困った時や寂しい時でも自分の気持ちを「おうちの人」に伝えずに「おうちの人」に知られないようにし、自分の状況や本当の気持ちを「おうちの人」に伝えることを避ける内容が含まれている【回避・非表出】の下位尺度である。不安場面において愛着対象者が安全基地となっているかを測る尺度である。「あてはまらない」から「あてはまる」の4件法で測定した。
(3) 社会的能力尺度
「小学生版『社会的能力と情動』尺度(田中・真井・津田・田中, 2011)」のうち基礎的社会的能力尺度5因子15項目を使用した。「私はいやなことがあっても、やつあたりしない」など、物事を適切に処理できるように情動をコントロールし、挫折や失敗を乗り越え、また妥協による一時的な満足にとどまることなく、目標を達成できるように一生懸命取り組む力である【自己のコントロール】、「私は、友達の気持ちを考えながら話す」など、周囲の人との関係において情動を効果的に処理し、協力的で必要ならば援助を得られるような健全で価値のある関係を築き維持するが、悪い誘いは断り意見が衝突しても解決策を探ることができるようにする力である【対人関係】、「私は、自分だけ意見がちがっても意見を言う」など、関連する全ての要因といろいろな選択肢を選んだ場合に予想される結果を十分に考慮し、他者を尊重し、自己の決定について責任を持って意思決定を行う力である【責任ある行動決定】、「私は、自分の気持ちがわかる」など自分の感情に気付き、自己の能力について現実的で根拠のある評価をする力である【自己への気づき】、「私は、友達のいいところをみつけることができる」など、他者の感情を理解し、他者の立場に立つことができるとともに、多様な人がいることをみとめ、良好な関係を持つことができる力である【他者への気づき】の5つの下位尺度で構成されている。場面を限定しない基礎的な社会的能力を測るために使用した。「あてはまらない」から「あてはまる」の4件法で測定した。