【考察】
3.父母差
(1)父母ごとのスキンシップと愛着、社会的能力の関連
父母別の相関関係を行った結果、父母によって異なる相関関係がみられた。母親では、「1番身近なおうちの人」全体で行った相関分析と同じ結果を示した。しかし、父親ではスキンシップの3下位尺度との有意な相関関係は「帰属安心」「親密・表出」と「他者への気づき」のみに示された。つまり、母親とのスキンシップは社会的能力との間に関連がみられたが、父親とのスキンシップでは「他者への気づき」以外との関連はみられなかった。よって、父母ともに、スキンシップと他者の感情を理解し、他者の立場に立つことができる力との関係があることが示された。また、浜崎ら(2008)では、父親と母親のスキンシップは、行動レベルでは同じであっても、スキンシップの目的が異なっている可能性が示唆されている。本研究においても、浜崎ら(2008)と同様に、「おうちの人」によって行動としては同じスキンシップであっても、子どもが受け取っているスキンシップの意味合いが異なることが想定される。
(2) 性差と父母による各下位尺度の差
性別と父母を独立変数、各下位尺度を従属変数とした2×2の分散分析を行った結果を父母の差に焦点をあてて考察する。「遊び」「世話」においては、「1番身近なおうちの人」に有意な主効果がみられ、いずれも父親の方が母親より得点が高いことが示された。遊びスキンシップは体を動かして遊んだり、活動したりすることであり、家庭の中の役割は父親の方が母親よりも大きいものであると考えられる。また、杉原(2001)では、父親の方が動的な遊び方、母親は静的な遊び方をすること示されていることから、スキンシップにおいても同様に、動的なスキンシップここでは遊びスキンシップを父親の方が多くすることが考えられる。
父親は母親に比べて就業率が高く、父親の多くは仕事のために日中は家に不在で、父親は子どもと接する時間が少ないことが考えられる。そのような子どもとの時間がなかなか作れない中で、毎日の入浴などで子どもと関わる時間を設けていることが推測される。また、圧倒的に母親を選んだ子どもが多い中で、父親を選んだ子どもたちは、普段から父親と親密な関係を築いていることが考えられ、そのため世話スキンシップも多くなっていることも推測される。
「自己コントロール」に有意な交互作用がみられ、母親を選んだ女子は母親を選んだ男子よりも得点が高いことが示された。母親ではスキンシップや愛着の一部と自己コントロールに有意な正の相関関係が見られたが、父親では有意な相関関係は見られなかったことと、女子の方が男子よりもスキンシップと愛着が多いことを考慮すると、母親を選んだ女子の方が男子より自己コントロールの得点が高いという結果は妥当であろう。