【問題と目的】
4.LINEの「既読表示」機能について
LINE特有の機能として「既読表示」がある。
これは,LINEによるメッセージ(以下,本研究における“メッセージ”はLINEによるメッセージを指す)を受信した際,受信者が送信者とのトークルームを開いた段階で,送信者の画面に「既読」という文字が表示される機能である。
これは,東日本大震災の経験をもとに,安否確認がより容易にできることなど,「相手がメッセージを確認したかどうかわかる」ことを一つの利点としてつけられた機能であった。しかし,日常的に利用する中で,「自分の送ったメッセージを読んでいるにも関わらず返信を送ってこない」,すなわち,「自分は無視をされている」という捉え方をする利用者が出てきた。また,この既読表示はメッセージを開いた段階で自動的につくため,メッセージの受信側が返信できない状況にある場合でも,送信者から「無視をしている」と捉えられてしまう可能性がある。このように,受信者側の意図や状況に関わらず,既読表示をつけたまま返信をしていないことが「既読無視」と呼ばれている。
LINEでのコミュニケーションが普及するとともに,この「既読無視」(利用者のなかでは,「既読スルー」とも言われている)という行為が問題視されるようになってきた。
具体的には,既読無視をされたことを不快に思ったメッセージの送信者によって,友人を仲間外れにしたり,いじめたりするという事例が数多く報告されている。さらに,メッセージの受信者の立場に着目すると,届いたメッセージを開いた(既読表示をつけた)段階で,それがたとえ授業中などでもすぐに返信のための作業や行為に移るといった状態が見受けられる。このことは,いろいろな社会的な行動のなかでもかなり優先順位が高いことを示しており,自分にとって重要なコミュニケーションと位置づけられている可能性がある。平たく言えば,LINE上でのやりとりを常に気にしている,あるいは気になっているということであり,そこに意識がいく状態が長い時間持続しているといえる。
既読の表示とそれにまつわる諸々の意識は,当事者にとって,非常に重要な問題を含んでおり,ここに関わる心理的な問題について検討を行う。