4.笑いに対する意識


  福島(2009)は,笑いが受け手にもたらす機能を探ることによって,笑いに対してどのような意識をもっているかについて検討した。そこで笑いの意識に関する調査を行い,笑いを「ユーモア」「微笑み」「声を出して笑う」「お笑い」の4つに分類し,更に「心理社会的効果」「社交上の笑い」「感情表出・隠蔽」「ストレス発散」「他者への思いやり」「優越」の機能があることを示した。そして笑いに対してどのような意識を持つかということと,対人コミュニケーションには関連があることを示唆した。福島(2009)によると,「ユーモア」と「お笑い」は笑い刺激であり,周囲の他者から笑いを誘う際の笑いに対する意識について問うものであるのに対し,「微笑み」と「声を出して笑う」は笑い反応であり自分が笑いを表出する際の意識を問うものである。本研究においては,「微笑み」と「声を出して笑う」の2つの下位因子を使用することとする。福島(2009)は,笑い反応は対人場面において印象形成に関連していることや,場を取り繕う意図で用いられることも示唆している。更に,大学生の笑いに対する意識と社会的スキルとの関連を検討し,笑いを肯定的に捉えている人ほど社会的スキルが高いことを明らかにした。そして,他者と協調的に関わるために,場を和ませる機能を持つ「笑い」に対して高い意識を持つことが大切であると述べている。更に,福島(2009)は笑いの捉え方によって対人葛藤方略の選択が異なることも明らかにした。つまり,笑いをどう捉えているのかによって対人場面における自分の行動選択に違いが見られると考える。この点においても,笑いに対する意識は対人場面における行動,すなわち社会的スキルと関連があることが予想される。
  また斎藤(2013)は,親と肯定的な関係を持ち,普段からコミュニケーションをとっている青年の方が親と一緒にいるときに笑う傾向にあることを指摘している。家族のコミュケーションは凝集性を促進することが明らかにされていることから(茂木,2007),家族システムの安定及び家族の健康性は子どもの笑いに対する意識と関連すると考える。以上のことから,家族の健康性の基盤である夫婦関係の良好さは子どもの笑いに対する意識に影響を与えることが推測される。

  本研究において笑いに対する意識とは,福島(2009)に基づき「笑いの意図や原因に対してどのような考えを持っているか」と定義する。



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