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問題と目的



1.はじめに


 学校における学習評価の4観点として、文部科学省は「関心・意欲・態度」、「思考・判 断・表現」、「技能」、「知識・理解」を挙げている。これらを評価する方法として、文部 科学省「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(2010)では、ペーパーテストの ほか、観察、面接、質問紙、作品、ノート、レポートなどを用いることが考えられるとされ ている。最近では、評価をペーパーテストに頼らないようにしようという流れはあるが、ま だまだ学期末や学年末に行われるペーパーテストによって評価をすることが多いのではない だろうか。このことから、学習者の学習の成果を測るものとして、テストという方法は欠か すことができないと考えられる。

 また、評価を受ける側である子どもについては厚生労働省が小学校5年生から高校生を対 象に行った「全国家庭児童調査」(2009)で、「不安や悩みがある」と答えた者のなかで、 「自分の勉強や進路について」と答えた小学生が38.7%、中学生が68.4%、高校生等が 75.5%であり、小学校から中学校にかけて大幅な増加があることから、学年が上がるにつ れて、学習の不安や悩みが大きな位置を占めるようになることがうかがえる。この不安の なかには学習を評価されることに対する不安もあると考えられる。

 中学生・高校生が学校で受けるテストの多くは定期テストであり、山森(2004)は定期テス トを、生徒にとって自らの学習活動を振り返り、また今後の学習への展望を持ちやすい機 会であると考えられると述べており、テストが学習の指標となっており、中学生・高校生に とって学校生活のなかで大きな意味を持つと考えられる。しかし、テストのための準備期間 であるテスト期間が設けられ、準備をしたうえで、評価にも関わるテストに臨むという状況 は、普段の学校生活とは違う特殊な状況である。その際に、多くの学習者がテストに対して 不安を感じることがあるという声を聞くことも多い。不安が高すぎると、体調を崩してしま う、頭が真っ白になって解答が書けないなどの症状から、日常の学習活動の成果が発揮でき なくなり、テストという方法で学習者の実力を測り評価すること、また学習者が今後の学習 の展望を持つことが難しくなることから定期テストの価値が失われかねない。

 そこで、テストに関わる不安をコントロールすることができれば、不安を抑えた状態でテ ストに臨むことができるため、テストという方法で学習者の実力を測りやすくなり、学習者 にとって定期テストが意味のあるものになると考えられる。さて、不安をコントロールする ための要因としては、学校や教師などが介入する学習者の意思や行動以外の外的な要因であ ると、進級や進学などでテスト状況が変わると学習者が対応できなくなってしまうことが考 えられる。そこで、外的介入ではなく、学習者が自分の意思で不安をコントロールできる方 法であれば、どのようなテスト状況にも対応することができると考えられるため、学習者が テスト前に起こす行動の中で、不安をコントロールできる要因に注目する。本研究では、不 安をコントロールする要因として学習者が使用する学習方略に焦点を当て、学習方略がテス トに関わる不安に及ぼす影響を検討する。