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考察



2.テスト1週間前のテスト状態不安への影響


 テスト1週間前のテスト状態不安を従属変数とした重回帰分析から、「テスト状態不安1週間前無視」には 「比較テスト観」から正の影響があった。これは、テストを人の優劣を決めるためのものだと考えているほど、 テスト1週間前にテストから逃げようとする思考が働くことを示している。この結果は、鈴木(2011)の、テスト観の 「比較」の側面を強く意識するほど、テストへの接近傾向が低くなり、テストからの回避傾向が高くなるため、 適応的な学習方略の使用が抑制される可能性があるとした結果を支持するものとなった。

 また、「テスト状態不安1週間前ポジ」には「社会的方略」から正の影響があり、他者の存在がテスト前の ポジティブな思考に影響を与えていることが示された。「社会的方略」のような人的リソース方略は、 佐藤(1998)の研究でも明らかとなっているように、コストは少ないがあまり有効ではなく好まれることが少ないとされ、 他者依存的な負の側面が取り上げられることが多い。しかし、今回のような結果となったのは、伊藤・神藤(2003b)の、 友達とともに学習をしたり相談をしたりすることが課題や学習、取り組み方を工夫・調整し自らを動機づける方略となり、 内発的な動機づけに結びついているとした研究に繋がると考えられる。また、Newman(1990)は、自分を有能だと認知している子どもは、 救援行動を困難を軽減する道具的な方略であるとし、必要なときには周囲に援助を求めると述べている。本研究の対象者は進学校の 生徒であることから、自身を有能だと認知している生徒が多いと考えられ、「社会的方略」の積極的な側面が目立つ結果となったと考えられる。