3.テスト結果不安への影響
テスト結果不安を従属変数とした重回帰分析から、「結果不安懸念」には「改善テスト観」「比較テスト観」から
正の影響があった。「結果不安懸念」には、自分の点数や解答を気にするという項目や他の人の点数を気にするという
項目が含まれているため、テストは自身の学習に活用するためのものだと考える「改善テスト観」を持つ人は自分の点数や解答を、
テストを人の優劣を決めるためのものだと考える「比較テスト観」を持つ人は他の人の点数を気にする傾向があったのではないかと
考えられる。鈴木ら(2015)の研究では、「改善テスト観」が、友達よりもよい成績を取りたいなどの「取り入れ的調整」と共変関係
を示しており、その考察として、Regner,Escribe,&Dupeyrat(2007)の学習内容の理解や習得を指向する学習者が、他者との比較を
利用することで、自己評価と自己改善を行っていることが例に挙げられている。また、外山(2007)は中学生を対象とした研究で、
数学の学業コンピテンスの高い人にとって、友人と遂行の社会的比較を行うことが学業成績の向上においてプラスの影響を及ぼす
ことを明らかにした。これらの研究から、学習改善のためのテストと考える「改善テスト観」と、テストは有能さで分けるための
ものといった他者との比較に関連のある「比較テスト観」にはどちらもテスト結果を気にする要素が含まれていると考えられる。
また、「結果不安懸念」には「暗記反復方略」からも正の影響があり、「暗記反復方略」を使用すると、
自分の結果に自信を持つことができないことが表れている。「暗記反復方略」はとにかく数をこなす方法であるという点で
「意味理解方略」とは違っており、この方略を選択・使用することは、必ずしも学習内容を理解していることには繋がらないため、
このような結果になったと考えられる。これは堀野・市川(1997)の研究で見出されている、「体制化方略」はよい学習成果に結びつくが
「イメージ化方略」「反復方略」はよい学習成果に結びつかないという結果とも繋がると考えられる。