4. キャラサブカテゴリ上位5位の比較
キャラサブカテゴリによって,「キャラに対する考え方」と「友人関係満足度」および「友人関係」の得点が異なるかどうかを検討するため,回答数が多かった上位5種について,1要因分散分析を行った。
その結果,キャラに対する考え方の「キャラに対するデメリット認知」において,「いじられ」と「まじめ」の間に有意な群間差がみられ,「まじめ」のほうが得点が高かった。
キャラカテゴリでは,「いじられ」キャラは「友人関係における役割」キャラにあたり,「まじめ」キャラは「当人の性格特性」キャラにあたる。結果には,この分類が関係していると考えられ,「当人の性格特性」キャラのほうが,「友人関係における役割」キャラよりも,当人の性格に沿った“キャラ”を用いていると推測される。
「友人関係における役割」キャラは,グループ内での役割や立ち位置として用いられている場合が多いと考えられるのに対して,「当人の性格特性」キャラは,“キャラ”を立ち位置や役割として捉えていない,つまり,コミュニケーションの円滑化といったメリットの認知をあまりしておらず,自分の性格をそのまま友人グループでも表出していると考えられる。そうすると,言語の制限などの“キャラ”があることのデメリットのほうをより認知している可能性がある。この点で,千島・村上(2015)は,「友人関係における役割」キャラと「当人の性格特性」キャラでは,前者の方が友人に気を遣い,“キャラ”があることへのメリットを認知しているということを述べている。さらに,“キャラ”があることのデメリットをより感じているために,「友人関係における役割」キャラを用いることを避けて,あえて「当人の性格特性」キャラを用いている場合も考えられるのではないだろうか。この点を踏まえると,「まじめ」キャラは「いじられ」キャラよりも,当人の性格に沿った“キャラ”であることから,コミュニケーションの円滑化のための役割や立ち位置として“キャラ”を用いておらず,“キャラ”についてメリットよりもデメリットの側面をより認知していると考えることができよう。
また,友人関係満足度においても「いじられ」「お笑い」と「まじめ」の間に有意な群間差がみられ,「いじられ」「お笑い」の方が「まじめ」よりも得点が高かった。この点は今まで述べた通り,“キャラ”に対して,メリットをより認知している「友人関係における役割」キャラである「いじられ」と「お笑い」は,デメリットをより認知している「当人の性格特性」キャラである「まじめ」と比較して,“キャラ”を用いて円滑なコミュニケーションを行えていると考えられる。このことが友人関係満足度の高さにつながっているのではないか。しかし,「まじめ」キャラの友人関係満足度の得点も決して低いわけではないため,“キャラ”に対してデメリット認知の側面が強いとしても,良好な友人関係を築くことは可能であるといえるだろう。
そして,友人関係の「群れ関係群」「関係回避群」において,ともに「まじめ」と「お笑い」との間に有意な差がみられた。「群れ関係群」の得点は「お笑い」の方が高いのに対し,「関係回避群」の得点は「まじめ」の方が高いことが示された。今までも述べた通り,集団で表面的な付き合い方を好む「群れ関係群」は,“キャラ”を用いたコミュニケーションとの関連が最も強く,「キャラに対するメリット認知」も強いことが示され,立ち位置や役割としての“キャラ”が多く用いられていることが明らかになった。このことから,「群れ関係群」においては,「友人関係における役割」キャラの需要が高いと推測され,「友人関係における役割」キャラである「お笑い」キャラと関連がみられたと考えられる。
一方,「関係回避群」は,“キャラ”の使用との関連も強くなく,立ち位置や役割として“キャラ”があまり用いられていないと考えると,逆に当人の性格特性をそのまま表出した「当人の性格特性」キャラである「まじめ」キャラとの関連がみられた可能性が考えられる。また,「関係回避群の」友人関係の在り方は,深い関係を避け,互いの領域を侵さないで付き合うため,相手の領域に必要以上に入り込まないという配慮を常に行っている可能性があり,「まじめ」という性格特性の“キャラ”において,特にそのような配慮が払われていると考えることができるのではないか。そのため,「当人の性格特性」キャラである「まじめ」は「関係回避群」との関連がみられたのかもしれない。
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