〈目的2について〉6. “キャラ”の切り替えの有無による差異の検討
各下位尺度におけるキャラ切り替えの有無による差を検討するためにt検定を行った。
結果として,変化動機の「自然・無意識」にキャラ切り替えの有無による有意な差が認められ,キャラ切り替え有群の方が,キャラ切り替え無群よりも得点が高かった。このことから,キャラ切り替え有群において,“キャラ”の切り替えは「自然・無意識」を動機として行われているということが示された。
この,「自然・無意識」は,“なんとなく”や“気づいたら”変わっているというような変化の仕方を表しており,“キャラ”を切り替えている者は,意識的に行っているというよりも,状況や集団に合わせて無意識的に行っている可能性があるということが明らかになった。この結果は,佐久間・武藤(2003)が自己の変化の理由として,意図的にというよりも自然・無意識的な変化を挙げていることとも一致する。
しかし,ここでもう1つ考えられることとして,“キャラ”を用いている本人が“キャラ”を用いていることそのものに気づいていない場合があるかもしれない。本人のもともとのパーソナリティと,コミュニケーション・ツールとしての“キャラ”が,本人のなかで区別されてない場合や,その“キャラ”が自身のパーソナリティそのものの場合の可能性も考えられる。この可能性については,質問紙調査での回答には限界があるため,他の調査方法について考えていく必要がある。
また,“キャラ”の変化程度についても,キャラ切り替えの有無によって有意な差がみられた。このことから,友人グループによってどの程度自分の“キャラ”を切り替えているのかという変化程度は,キャラ切り替え有群は得点が高く,キャラ切り替え無群は得点が低いということが示された。
キャラに対する考え方と友人関係満足度および友人関係については,“キャラ”の切り替えによる有意な差がみられなかった。このことから,“キャラ”に対してメリットを強く認知している場合とデメリットを強く認知している場合どちらも,“キャラ”の切り替えは行われ得るということが考えられる。“キャラ”の切り替えが自然・無意識的に行われていることから,“キャラ”に対しては,特別意識をせずに使用していると考えられる。また,友人関係や友人関係満足度の高低も,“キャラ”の切り替えに関わらないということが推測される。
この点で,仮説1と仮説2はともに支持されなかった。しかし,“キャラ”の切り替えが自然・無意識に行われている可能性が示唆された点は,意義があったといえるだろう。
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