2. 各尺度の関連について(“キャラ”と友人関係に関して)


2-1. 「キャラがあることのメリット認知」と友人関係満足度および友人関係との関連について

 キャラに対する考え方の下位尺度「キャラがあることのメリット認知」は,「友人関係満足度」と友人関係の下位尺度「群れ関係群」との間に正の相関がみられた。
 “キャラ”があることについて好意的に感じていることを表すメリット認知は,“キャラ”を用いたコミュニケーションの使用を促進すると考えられる。また,“キャラ”を用いたコミュニケーションは,円滑なコミュニケーションや集団内での居場所の獲得につながる(千島・村上,2015)ことから,友人関係満足度との間に正の関係がみられたと考えられる。この結果は,千島・村上(2015)の“キャラ”がある者は集団内で自分の役割を強く実感することができるために居心地の良さを感じ,友人関係満足度が高くなるという結果と一致している。
 また,“キャラ”がある者は群れ的に友人と付き合う傾向が強く,集団で表面的な楽しさを重視する「群れ関係群」のような関係の中では話題が作りやすく笑いのネタになるといった“キャラ”の機能が十分に発揮される(千島・村上,2015)ことから,「群れ関係群」において“キャラ”を用いたコミュニケーションが多く行われていると考えられる。そのため,“キャラ”を用いたコミュニケーションの使用を促進すると考えられるメリット認知との間に正の関係がみられたのではないだろうか。


2-2. 「キャラがあることのデメリット認知」と友人関係満足度および友人関係との関連について

 キャラに対する考え方の下位尺度「キャラがあることのデメリット認知」は,友人関係満足度および友人関係のどの下位尺度とも相関はみられなかった。
 千島・村上(2015)は,“キャラ”がある者において,友人関係に気を遣うことが“キャラ”があることのデメリットを促進し,そのデメリット認知によって自分の“キャラ”を演じることのストレスが生じ,結果として友人関係満足度が低下するというプロセスを示した。しかし,本研究では,「キャラがあることのデメリット認知」と友人関係満足度には相関はみられなかった。また,「キャラがあることのデメリット認知」の得点は比較的高くなっているが,友人関係満足度についても,全体的に高い得点であった。この結果は,「キャラに対するデメリット認知」によって友人関係満足度の低下をもたらすという千島・村上(2015)の示したプロセスとは矛盾する。
 この点に関して,今回の調査で回答者が想起したグループが,すべて身近で比較的親密な関係のグループであったことが考えられる。回答者に自由にグループを選んで想起してもらったために,より身近で考えやすいグループを想起したと考えられる。そのため,もともと友人関係満足度の比較的高いグループばかりが想起された可能性がある。それゆえ,キャラに対する考え方との関連による友人関係満足度の差が表れてこなかったと推測される。それゆえ,「キャラに対するデメリット認知」の得点が比較的高く,友人関係満足度の得点も高いという結果が示されたのではないだろうか。
 また,友人関係満足度の高い集団においても,“キャラ”を本来的な自己表現としてではなく,不本意に演じているために「キャラに対するデメリット認知」が高くなっているという場合もあるかもしれない。このことから,友人関係満足度の低い集団(たとえば友人としての関係が希薄であると認知していても,同じ学科等で顔を合わせねばならない状況が日常的にあるような集団)において“キャラ”を演じる場合は,逆に「キャラに対するメリット認知」が高い可能性もある。このことは,さらなる調査・検討が必要であろう。


2-3. 友人関係満足度と友人関係との関連について

 友人関係満足度は,友人関係の下位尺度「群れ関係群」との間に,正の相関がみられた。
 今までにも述べた通り,集団で表面的な関係を好む「群れ関係群」では,他の2つの群よりも,“キャラ”を用いたコミュニケーションが多く行われていると考えられる。千島・村上(2015)も,この点について“キャラ”がある者は群れ的に友人と付き合う傾向が強いと述べている。この場合,“キャラ”の使用によりコミュニケーションがより円滑に行われていると考えられる。
 つまり,友人集団で群れているなかで,各自の“キャラ”やその“キャラ”の役割自体が,潜在的に期待されているお互いの役割分担として適切に機能しているのであれば,その役割の“キャラ”を演じ続けることで,友人関係満足度が高まった可能性がある。このことから,友人関係満足度との間に正の関係をもたらすことにつながったと考えられる。



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