〈目的1について〉1. 大学生の“キャラ”の実態について
友人間での“キャラ”にどのようなものが存在し,その“キャラ”がどのように使われているのかを明らかにするために,質問紙調査において,現在もしくは過去に所属していた友人グループでの“キャラ”を想起してもらった。
その結果,自分の“キャラ”として多数を占めたのは,男性女性ともに「いじられ」「お笑い」キャラであった。千島・村上(2015)が,“キャラ”があることのメリットとして,友人関係を楽しく行うために“キャラ”を用いることは円滑なコミュニケーションの促進につながると述べているように,友人グループにおいて楽しく過ごすことは,良好な関係を築く上で必要なことであり,楽しく過ごす上で,「笑い」は必要不可欠なものであるだろう。そのように考えると,「笑い」に繋がりやすいであろうこれらの“キャラ”が多く用いられていると推測される。また,「いじられ」キャラや「お笑い」キャラは,実際にテレビなどのメディアでよく扱われる言葉でもあることから,“キャラ”としての認知度が高く,身近に感じられる“キャラ”であると考えられ,多く用いられているのではないだろうか。
また,性差については,女性にのみ挙げられていた「ほのぼの」「天然」キャラの人数が多かった。この点に関して,このような“キャラ”は,男性的よりも女性的なイメージを含んでいることから,女性でより多く連想されたためではないかと考える。対して,男性は「ボケ」や「お調子者」キャラが多く挙げられた。これらの“キャラ”は,「いじられ」「お笑い」キャラと同様に,「笑い」に関する“キャラ”であり,男性の方が女性よりも,友人集団における「笑い」のニーズが高いのではないかと考えられる。また,“キャラ”のメリットとして友人関係を単純化しわかりやすいものにする点があることを考えると,“キャラ”自体が,関係のなかでの役割上のいわば「わかりやすさ」つまり一種のステレオタイプのようなものと関連があり,男性にとっては,たとえばお笑い芸人に代表されるようなステレオタイプ的な“キャラ”が受け入れられやすいともいえるのではないだろうか。
加えて,キャラカテゴリについてみると,人数の多かった「お笑い」や「ツッコミ」「いじられ」のキャラサブカテゴリは,どれも「友人関係における役割」キャラに分類され,「当人の性格特性」キャラよりも多く用いられていることが示された。“キャラ”は,コミュニケーション・ツールの一つであることから,当人の性格よりも友人関係の中での立ち位置や役割的な意味を持って使われる場合が多いと考えられる。
次に,自分以外の他メンバ―の“キャラ”については,自分の“キャラ”と同様に「いじられ」や「ツッコミ」キャラが多いという結果が得られた。これは,自分の“キャラ”と同様に,友人グループにおける笑いの必要性からくるものであると考えられる。また,自分の“キャラ”との違いとして「しっかり者」キャラが多かったことが挙げられるが,このことに関しては,「しっかり者」という性格特性に関する“キャラ”は,比較的ポジティブなイメージを与える“キャラ”であり,謙遜したり自己卑下的な傾向のある日本人では,自分に対してよりも他人に関して連想しやすいのではないかと考える。
←back/next→