2.家族からの自律性援助


 2-1.家族関係

 家族関係が子どもの発達に影響を与えることは佐々木(1994)や宮下(1991)が示している。佐々木(1994)では家族関係が子どもの性格形成に与える影響が示されている。宮下(1991)では青年期の女性は母親の養育態度における情緒的支持や受容性に対して自己愛傾向との負の相関を,男性は父親の養育態度における支配的や介入的な態度と自己愛傾向との間に正の相関を認めている。また,松原(1974)では子どもが将来どのように成長するかは親のしつけなど,子どもと親との関係性が大きな影響を持つものであると考察されている。さらに,森下・三原(2013)でも,両親などの保護者との関わりにおいて,母親への愛着を高く感じると自己受容や異性不安を高めることや,父親への愛着が内的作業モデルを安定させていることが述べられている。内的作業モデルとは,発達初期の子どもと養育者との関わりにおいて生じた愛着関係から養育者を含む他者や自己の認知的枠組みを内在化され形成されるもの(森下・三原,2013)であり,森下・三原(2013)ではこの内的作業モデルが安定されることによって自己受容を高めることや異性不安を低下させることが述べられている。こういったことからも,家族関係の中でも特に両親などの保護者としての立場を持ち子育てに携わっている大人が最も子どもに影響を与えやすいことがわかる。

 2-2.自律性援助について

 私たちは日々の生活の中で多くの他者と関わり,多くの援助を受けて成長してきただろう。その中でも,自らが大人になって社会の中で過ごしていくために必要な「自律」も他者からの援助によって形作られるものであると考えられる。ここでの自律とは,他からの支配を受けず,自分自身の規範に従い行動することをいい,単に独り立ちをすることだけを示しているのではない。この自律を援助する養育態度を自律性援助という。これは,保護者等が子どもと関わる際に行われる援助の1つである。自律性援助の例としては,「人に言われるのでなく自分の意思を持って行動すること」や「自己判断を進んで行えるようになること」などといった,子どもの自律のために必要なことを保護者が関わりの中において励ましなどの援助をすることが挙げられる。このように,自律性援助は子どもの行動の援助として取り扱われ,子どもに対して圧力やプレッシャーをかけて指導するのではなく,子ども自身が何かすることに関して励ます態度をとる援助をすることである。

 桜井(2003)は自律性援助に関して,動機づけの面から検討を行い,大学生自身が自律性援助を高く認知していると行動の原因を自分に求める自律志向性が高く,物事に対する動機づけに対して無気力な状態である動機づけ喪失志向性が低い傾向があることを明らかにし,親からの自律性援助の認知の大きさは大学生に対して影響を与えることを示した。また,伊藤(2010)においても親による子どもの自律性支援が子どもの動機づけに関して関連していることについて示されており,このことからも自律性援助は子どもに対して動機づけの面においても重要な意味合いを持つことが分かる。そのため,自律性援助を子ども自身がどのように認知しているかは自己の発達や動機づけに何らかの大きな影響をもち,多くの場合で子どもに対する肯定的な面への影響が与えられていると考えられるだろう。



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