2.心理的居場所感


2-1. 居場所の定義

 石本(2010)は,教育臨床や心理臨床の領域では,他者との関係の中で,個人が「ありのままでいられる」ことと「役に立っていると思える」こと,つまりは他者との関係に対する意味づけを居場所の心理的条件としている。この条件を踏まえ,田島・山ア・渡邉(2015)では,「心理的居場所感」を,「自己の存在感を実感し精神的に安心していられ,ありのままでいることができ,役に立っていると思えること」と定義している。これを,本研究での心理的居場所感の定義とする。

2-2. 居場所の分類  

 安齋(2003)は,「前向きな居場所」と「後ろ向きな居場所」の2つの方向性の内在を主張し,「前向きな居場所」を自分の自己像を修正し,自立していく場であり,集団の中で子どもがいきいきと自己発揮する場,「後ろ向きな居場所」を居られない場から逃げだし,立ち止まって心の安定を図る場としている。また,中島・倉田(2004)は,一人になって自分を取り戻せる場所を「個人的居場所」,人と関わりをもち,自分を確認できる場所を「社会的居場所」として分類した。このように,居場所の分類が様々にされる中で,居場所について則定(2008)は,「居場所」の中でも心理的な側面に着目し,物理的居場所とは区別して考えることを明示するために「心理的居場所」という言葉を提示した。これらの様々な分類の中でも特に,筆者は心理的な意味での居場所に興味がある。そこで,本研究では則定(2008)が物理的な居場所と心理的居場所を区別した分類の中の,心理的居場所を扱っていく。



back/next