4.自己呈示に係わる被服行動と賞賛獲得欲求との関連


 「賞賛獲得欲求」と『装いにおける流行志向』・『装いにおける社会儀礼志向』・『装いにおけるブランド志向』・『装いにおける個性志向』の間に低い相関がみられ,また,「賞賛獲得欲求」と『装いにおける流行志向』・『装いにおける社会儀礼志向』・『装いにおけるブランド志向』・『装いにおける個性志向』の得点についての「賞賛獲得欲求(高群・低群)」×「拒否回避欲求(高群・低群)」の二要因分散分析の結果,「賞賛獲得欲求」のみに主効果がみられた。

 「賞賛獲得欲求」が高いこととの関連で,流行を取り入れることや,高価で品質がよかったり人気があったりするブランドのものを身につけること,社会的にふさわしく周囲に失礼にならないような被服を身につけること,人とは違うようなデザインの凝った被服を身につけることなどの様々な被服行動が行われることが示された。

 小島(2007)は,谷口・小林(2005)が作成した一般的自己呈示行動尺度を用いて,賞賛獲得欲求・拒否回避欲求と自己呈示行動の関連について検討しているが,そこでは賞賛獲得欲求が「面白い行動」,「前向き行動」,「知的行動」,「外見行動」など,ポジティブなイメージを示す様々な自己呈示行動と関連していることを示している。このことから考えると,「賞賛獲得欲求」が高い人が『流行』,『社会儀礼』,『ブランド』,『個性』など一般的にポジティブな印象を与えやすい被服行動の得点が高いことは,先行研究と同様の結果であったということができるだろう。

 また,吉澤(2012)は「賞賛獲得欲求」が高い者は外見的魅力や有能さ,社会的望ましさ,個人的親しみやすさを呈示したいという動機が高いことを示している。このことから考えると,『装いにおける流行志向』・『装いにおけるブランド志向』・『装いにおける社会儀礼志向』・『被服における個性志向』による被服行動によって外見的魅力や有能さの呈示が行われ,『装いにおける社会儀礼志向』による被服行動によって社会的望ましさが呈示されていることが推察される。



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