6.被服によって呈示したい自己と賞賛獲得欲求・拒否回避欲求との関連


 「賞賛獲得欲求」は《活発でさわやかな自分》と比較的高い相関,《賢くてまじめな自分》と低い相関がみられ,《活発でさわやかな自分》・《賢くてまじめな自分》の得点についての「賞賛獲得欲求(高群・低群)」×「拒否回避欲求(高群・低群)」の二要因分散分析の結果,「賞賛獲得欲求」のみに主効果がみられた。

 《活発でさわやかな自分》・《賢くてまじめな自分》を呈示することは,周囲からよい評価を得るための方略であることが推察される。小島(2007)は,小林・谷口(2004)が作成した一般的自己呈示イメージ尺度を用いて,賞賛獲得欲求・拒否回避欲求と自己呈示行動の関連について検討しているが,そこでは「楽しさ」,「外見的魅力」,「知的能力」などの因子と賞賛獲得欲求の比較的高い相関が示されている。これらの結果も踏まえて考えると,《活発でさわやかな自分》・《賢くてまじめな自分》のように,有能さを感じさせやすい自己イメージは賞賛獲得欲求が高い人ほど,より呈示したいものになるのだと推察される。

 一方,《かわいくて女らしい自分》の得点についての2要因分散分析の結果,「拒否回避欲求」の主効果は傾向性がみられることにとどまり,呈示したい自己イメージとの関連はほとんどみられなかった。このことから,他者から拒否されたくないという欲求は,被服によってどのような自分を呈示したいかにはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。



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