2.子どもの対人関係
2−2.子どもの対人関係における問題
深谷・中澤・猿田・小川(1998)は小学校中学年以降の友人関係について,ただ行動を共にするだけでなく,会話を通して自分の興味・関心や気持ちを伝えあうことが重要な役割を果たすとし,仲間とのコミュニケーションは複雑になっていくとしている。さらに中澤(2009)は,児童期の仲間関係を通して対人関係における適切な自己主張の方法やルールを守ることが,社会で生きていくための知識やスキルを発達させていくと述べている。また,大須賀(2016)は,学習などでのつまずきことを指す「9歳の壁」を乗り越えるには遊びや生活の中での経験の積み重ねをもとに抽象的で理論的な思考への移行していく「高次化」が必要であるとしている。さらに児童期には対人関係に占める仲間関係の比重が大きくなり,対人関係も多様化してくることを指摘している。このような仲間関係の中で上手くふるまえるかどうかは子どもたちにとって大きな課題となるのではないだろうか。そこで本研究では,友人との関係性が複雑になる小学校中学年に焦点を当てて考える。さらに,無藤・佐久間(2008)は,仲間関係が形成されてくると,集団内で地位の差が生じるとし,仲間から拒否されやすい子どもの特徴として,攻撃性が高い,引っ込み思案などを挙げている。このような特徴は,対人関係において問題を抱える子どもにも見られる特徴であり,自己表現やコミュニケーションに問題を抱えていると,仲間関係が円滑にすすみにくいことが窺われる。対人関係における困難さや周囲とのギャップを抱えていることを浦崎ら(2013)は,「他者とのズレ」とし,他者と過ごす中でそのズレに気づくことが「他者とのズレを埋める」ことになると述べ,このズレを埋めるような支援が必要だとしている。しかし,合理的配慮の重要性などが指摘されている今,求められていることは個々に応じた支援を行っていくことなのではないだろうか。
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