3.発達障害をもつ子どもの自己表現
3−2.周囲の児童との関係性
発達障害をもつ子どもは学習面や行動面の課題を有している。それに加えて,先にも述べたように対人関係の困難さを抱えている子どもも多く,対人関係の問題は年齢があがるにつれ,よりその問題は複雑化していくといえる。大須賀(2016)は,小学校低学年では,トラブルや子ども同士のぶつかり合いが目立つが,障害をもつ子どものみが学級の中で否定的にとらえられることは少ない。それに対し,小学校中学年,高学年になるとぶつかり合うことは少なくなる一方で,間違いや失敗を冷やかすことが多くなるという問題を指摘している。
また酒井(2012)は,小学校中学年という時期について,高学年や低学年ほどには注目されていないのが現状であるが,発達障害をもつ子どもにとっても,周囲の子どもとの関係づくりにとっても,実践的に重要なカギを握る学年であると述べている。中学年は発達の質的転換期の準備段階であり,様々な不安を感じやすいが,一方で周囲が困っているサインを感じにくいという問題があることを実践から報告している。つまり,小学校中学年の子どもが,自己の考えや気持ちを表現し,援助要請を行えることは,子どもの学校適応や今後の成長にとって大きな意味があるといえる。
浦崎(2009)は,自閉症児の有する社会性の課題に着目し,対人関係が開かれ社会性や他者との関係性が育っていくことにより,その発達が増進され,生活世界へのかかわり方が変容していくと述べている。自閉症児が他者の存在を意識し,他者と関係性を形成し生活世界を開かれたものにしていくためには,自閉症児にとっての重要な他者の存在が必要であり,彼らの内的世界を理解し,状況に応じたきめ細かい支援をしていく必要性を指摘した(浦崎,2009)。このことから,学校内で支援者が子どもにとっての重要な他者となり子どもが安心感を抱ける状況を作っていくこと,また,安心できる環境を形成し,その中で子どもが他者に意識を向け,他者との関係性の世界や意味世界を広げていくことが重要となる。
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