今後の課題


  本研究では,小学校中学年の発達障害をもつ児童を対象に,友人に対して,自己表現を行っている場面に焦点を当て,子どもの自己表現がどのように変容していくのか検討することを目的とした。本田ら(2015),織部(2016)を参考に以下の三段階のプロセスを仮定し,あわせて自己表現を育てる具体的な支援の手立てついて想定した。さらに自分の考えや気持ちを伝えられることと仲間関係の関連についてもあわせて検討していった。本研究における今後の課題を3点挙げる。

  第一に本研究は一事例のみの検討であり,観察から得たデータの解釈には限界がある。今後,多数の対象の観察や,数量的調査を行うことで,子どもの障害特性に応じた支援についてさらに理解が深まっていくだろう。
  第二に今回の調査は,小学校中学年の児童を対象としたが,子どもの発達における課題はそれぞれの年代によって異なってくる。小学校低学年からの早期支援や小学校高学年以降の思春期における対人関係の支援の検討なども重要である。それぞれの年代における調査を行うことで,子どもへの安定的で一貫した支援について検討することができるだろう。
  第三に今回の調査では,8カ月という限られた期間で週に一回という時間の制約もあり,子どもの行動全てを観察することができたわけではない。子どもの支援をより適切に行っていくためには継続的に関わりを持っていく必要がある。継続的に関わり,観察を行うことで子どもの自己表現の変容プロセスについての理解が深まるだろう。

  



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