提言
子どもの成長において他者とのかかわりは切っても切れない重要なものである。特に発達障害をもつ子どもは社会性やコミュニケーションに課題を抱えていることが多く,その発達には子どものことをよく理解し根気強くゆっくりと関わりを形成してくれる周囲からの支援が重要となるのではないかと考える。しかし,上手く自己表現をできない子どもたちは周囲から理解されにくく,必要な援助を受けにくい状況に陥ってしまいやすいのが現状である。そこで,周囲に対して上手く援助要請する力や自分の気持ちを相手に伝えられる力を子どもに身につけさせる支援の枠組みが必要なのではないだろうか。
本研究では,仲間関係との関連の中で子どもの自己表現を育てていくためには,複数の支援者がいることが効果的であることが示唆された。学校には交流学級担任,特別支援学級担任,支援員,教育ボランティアなど様々な立場で子どもたちに関わる人がいる。子どもに指導する役割,子どもにいつでも寄り添い続ける役割,友達でも教員でもない斜めの関係を作り友達との関係の橋渡しをする役割,様々な役割をそれぞれの立場で担っていくことが,子どもの多様な関係性を築いていく基盤となり,自己表現を育てていくことができると考える。
そこで子どもの支援の手立てとして教員間での連携の取り方について提案する。子どもに対して一貫性のある細やかな支援を行うためには教員間でどのように子どもに対応していくか決めておくことが大切だと考える。子どもへの対応を決める際に重要なことは,@誰がどのような役割で接するのか,A子どもの見立てについて,B子どもが不適切な言動をした時どのような対応をとるのかまたはどのように指導をしていくのか,の3点を軸にして話し合いをしていくべきだと考える。
まずは教員同士で話し合う場を設け,それぞれの立場や支援の役割を確認していく。子どもに対して誰がどのような支援をすることを目的とするのか共有していくことが重要となるだろう。
そして子どもを理解していく上で重要となるのが子どもの見立てであると考える。子どもの見立ては子どもと接する立場が違えば違ってくるものであるため,教員が集まり話し合いをしていく必要があるのではないだろうか。それぞれの立場の意見を共有し,さまざまな見方をしていく必要がある。この時,本研究で教員に回答を依頼したような質問紙等を用いて,項目ごとにどのように評価をしたのかを突き合わせながら話を進めていくことも子どもの見立てを共有していく手立てとして効率的なのではないだろうか。
子どもを理解し,次に重要となるのは子どもが不適切な行動をした時どのような対応をとるのかまたはどのように指導をしていくかを決めることだと考える。子どもの特性を理解し,子どもが自己表現することに対する意欲を失わないよう,タイミングを見計らい受容と適切な表現の指導とを繰り返していく必要があると考える。不適切な自己表現であったとしても気持ちを受容してもらえたかどうかは,子どもの自己肯定感やその次に行う自己表現にも大きな影響を与えうるのではないか。自分を受容してもらえた経験は子どもたちの原動力となっていくため,子どもの自己表現が育っていくよう指導することと,子どもの気持ち,変化,頑張りなどに気づき声をかけていくこととのバランスを保ちながら,子どもと関わっていくことが重要となってくると考える。
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