5.自己評価


  ドリームマップの受講によって、自分についてより詳しく知ることができる。自分についての知っているという認識のことを自己認知といい、岡(1988)は自己認知を、「主体的な自我が、客体的に自分のことを認識することである」としている。

 自己認知は多方面からの研究がなされており、遠藤(1992)は自己認知と自己評価の関連を研究し、自分の理想の自己像である理想自己に対する自己認知が自己評価に影響を与えていることを見出した。また、外山・桜井(2000)は感情側面での自己評価にあたる自己認知と精神的健康の関係について研究し、自分に都合のいいポジティブな自己認知が精神的な健康に影響を与えるという結果を見出した。さらに、藤瀬・古川(2005)は自尊感情と他者を想定した自己認知の関係を研究し、自分の評価と他者から見られている姿を想像した評価と、他者評価に対する自分の評価などが自尊感情に影響を与えているという結果を見出している。このように自己を客体的に認知する自己認知という概念は、他者から見られた自分の認知、自分自身の感情の認知などのように多方面の認知がある。

 また、自己認知の研究は、子どもを対象にしたものも多い。中山・田中(2008)は障害児の自己評価と自尊感情に関する研究で障害児が通常の子どもに比べ低い自己評価をしていることが分かった。また、小松(1999)は子どもの持つ社会的な特性に関しての自己認知は子どもと母親の差について、親子関係によって差があることを示した。

 このように、自己認知の研究は多岐に渡り、自己認知が捉える範囲も多くのものを捉えている。そこで本研究では、「自分自身はどう自分のことを思っているのか」という感情側面の自己評価について触れたいと思う。

 山本・松井・山成(1982)は自分への意識だけでなく、自分を構成する自己全てに対して向けられる評価を自己評価としている。先述したように、外山・桜井(2000)は、自分自身がポジティブであるという自己評価をしていると、精神的健康に良い影響を与えていることを示した。また、内田(1990)は青年の生活感情に焦点を当て、自分を肯定的な感情で捉えていると、日頃の生活場面などの現実の目標について向けた感情や将来の職業などの理想の目標について向けた感情に対してよい影響を与えていることを明らかにした。

  先述した通り、ドリームマップにおいて自分を知ることは重要とされており、Figure 2の1番のように、自分を知るという作業から行うことで初めて将来の夢を決定することができるからである。まず、1時間目では、自分の好きなものは何かなど、自分には多くの好きなものがあるという再確認を行う。また自分の大切にしているものやあこがれの人などの自分の大切なものの確認を行う為、改めて自分を評価することができる。また、コップの水によって自己承認を測るワークでは、感情的な側面で自分について捉える作業をする。また、2限目では自分の性格についていろんな見方ができることについて学ぶ。これは自分がマイナスだと捉えている性格でも、視点を変えるとプラスの性格としても捉えることができるということに気づくことができる為、さらに自分を知ることができる。ドリームマップ授業の最後にもコップの水のワークで自己承認を測る。以上のことから、ドリームマップ授業中に感情側面における自己評価を行う機会が多くあることから、自己評価はドリームマップにおいて重要なものであると捉えることができるのではないか。



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