4. 楽観性


  ドリームマップ授業を受講することによって、将来に対してよりポジティブな見通しを立てることができる。これは心理学の概念では楽観性として扱われる。
 楽観とは、物事をすべてよいように考えること、将来の成り行きについて明るい見通しをもつことをいい、楽観性とは、接尾語「性」がついた、そういった物事の捉える特性のことを意味する(大辞林第三版,2006)。また、Scheier & Carver(1985)は楽観性を、ポジティブな結果を予期する信念を一般的に持つ傾向のことであるとしている。更に、将来に対する結果をポジティブに予期することは重要なことであり、精神的な健康、身体的な健康にも影響を及ぼしている(Scheier & Carver,1985)。また、橋本・子安(2011)は楽観性とポジティブ志向と主観的幸福感との関連を見出しており、主観的幸福感が楽観性の影響を受けていることを明らかにした。さらに、楽観的な思考で物事を考えることは、大人から子どもまで影響を与えており、外山(2016)は児童の楽観性が学校適応や精神的健康に及ぼす影響を検討し、楽観性は独自の影響を与えていることを示した。
 将来のポジティブな予期することは、将来の夢を明るい内容にする上で必要なものである。ドリームマップにおいて、将来の夢は秋田(2013)の「思わず、ワクワクすること!動き出したくなること」という定義で形成される。ドリームマップの作成のルールの内、マイナスな言葉は使用しないというものがある。例えば「〜しないようにする」といった否定文は使用せず、「〜する」などの肯定文に直すというものがある。このように、ポジティブな表現を使用してドリームマップに書き込みを加えていく。また、ドリームマップの作成にあたり、自分の限界を考えず、どんなことでも叶うという考えから作成していく。楽観性は、自分に起こる結果をポジティブに予期する信念を一般的に持つ傾向のこと(Scheier & Carver,1985)であることから、ドリームマップの作成を通じてポジティブな結果を予期するトレーニングを行っていると考えられる。先述したように、2限目の下書きや3・4限目の作成の時間において、ドリームマップでは自分の描く夢が成就したという仮定で作成を行う。成就した将来の夢に対し、マイナスな表現を使用している場合、ポジティブな表現に修正するように促す為、ポジティブな表現を使い続けることで、仮に、将来について悲観的なイメージを持っていたとしても、自然と楽観的なイメージを持つことができるようになるだろう。また、5・6限の発表の時間の際には将来の自分という仮定をやめ、本来の自分の年齢で「夢が叶ったらうれしいこと」を考えることになる。「将来の夢が叶ったらうれしい」ではなく、「将来の夢が叶うことで何がうれしいか」まで考えさせる為、ポジティブな結果を予期しなければ発表が難しくなってしまう仕組みになっている。
 これらのように、ドリームマップ授業において悲観的に物事を捉える機会は6限目になるにつれて削減されていき、自然と楽観的に物事を捉えることに慣れさせることができると考えられる為、楽観性を育むことができると考えられる。



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