1.将来の夢

 

 1-2. 将来の夢の重要性
  先述した通り、小学生の将来に対するイメージは現実性が低いことが飛永によって指摘されているが、中央教育審議会(2011a)はキャリア教育の実践により、学校生活、社会生活、職業生活を関連付け、将来の夢と学業を結び付けることが、学習意欲を呼び起こすことの大切さを確認できると述べており、学業と将来の夢を結びつけることが重要であるとしている。他にも、将来の夢を取り扱った事例について取り上げる。酒井・井上(2008)はアスペルガー症候群を持つ女子生徒に対する支援の中で、将来の夢の為に何をしたらいいかを家族と考えさせ、女子生徒の行動を改めさせるきっかけを作っている。関根(2011)は精神障害者の地域生活過程の研究で、精神障害者同士の交流において仲間と話や活動を共にすることが不安感や恐怖心を軽減したと示しており、その話をする中に、将来の夢を語り合うというものも含まれていた。このように、将来の夢は様々な場面において有効に取り扱われ、将来の夢を見る、持つことは重要であるといえる。
 
 また、将来の夢について、どういった感覚や信念を持つのが望ましいのか。盛満(2011)は、貧困層の子どもの特徴を先生にインタビューしたところ、貧困層の子どもは就職を意識するあまり、自由な将来の夢を描けない様子にあることを明らかにした。盛満(2011)の研究では貧困層の子どもについての話であったが、貧困層に限らずとも、就職を意識しすぎることは、自由な発想の妨げとなるのではないかと推測される。更に、中村(2006)は現代の若者が目標を持てずに、自己を向上させる意欲が欠けていると指摘し、キャリア教育によってキャリア・プランを作成することが重要であるとした。つまり、将来の夢を描くには、自由な発想を抱き、自己を向上させたいという意志が必要だろう。そういった将来の夢を持つには、どのような教育を行う必要があるのだろうか。



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