2. キャリア教育ドリームマップ授業


2-1. キャリア教育とは
  将来の夢は、様々な教科を通じて考えられる。例えば社会見学などが挙げられ、自分の興味関心を広げることができるからである。それらも含め、最も重要なものとして「キャリア教育」が挙げられる。  
 キャリア教育を考えるにあたり、キャリアとは何であるかを考える必要がある。大辞林第三版(2006)によると「職業や技能上の経験」「経歴」などの意味である。しかし中央教育審議会(2011a)によると、「人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね」と定義しており、人生の過程、将来の道筋などを指すものである。つまり、キャリアとは、職業や技能などの経験や自分の過ごしてきた経歴だけでなく、人生の中で見出された自分の価値・役割の積み重なったものであるといえる。

 では、「キャリア教育」とは何か。キャリア教育とは、学校教育の現場において、子ども自身が自分の将来について考え、将来的に自立をする為の基盤を育てる教育であり、中央教育審議会(2011b)答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」によると、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義している。このキャリア教育の必要性が唱えられた背景として、社会のグローバル化や少子高齢化などの問題が挙げられ、社会の一員としての経験不足や、精神的・社会的な自立不足などの課題が浮き彫りとなった。こうした生きていく為の力を「生きる力」と言い、確かな学力や豊かな人間性などが求められるようになった。すなわち中央教育審議会(2011b)はキャリア教育を、将来自立する為に必要な力を養う教育としている。本研究ではキャリア教育を、中央教育審議会答申(2011b)の定義を引用する。
キャリア教育を実際に児童・生徒に行うには、適切な発達段階に応じた内容で授業を行う必要がある。キャリアに関わる発達を「キャリア発達」と言い、文部科学省(2006)は「自己の知的、身体的、情緒的、社会的な特徴を一人一人の生き方として統合していく過程である。」と定義しており、1人1人の個性や特徴を自分の生き方として、自分の中で決めていく過程のことを意味している。キャリア発達には段階があり、その段階に適した内容のキャリア教育を行う必要がある。下村(2008)は最近のキャリア発達理論の動向から、生涯に渡っての「決める」ことについての重要性を指摘しており、偶然の出来事が起こった際に、自分のキャリア形成にうまく取り込む準備が必要であるとし、先述した文部科学省の定義の「自己の知的、身体的、情緒的、社会的な特徴を一人一人の生き方として統合」をしていく為に、キャリア発達の各段階で「決める」力が求められるようになってくると唱えている。このことから、キャリア教育では、社会的・職業的な自立ができる様に生きる力を育み、一人一人の生き方を統合する為に、それぞれのキャリア発達段階にて決める力を養うことで、将来の方向性を決定づけていくことが重要になってくるのではないだろうか。



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