17.各尺度の使用について


 17-5.尺度間の関連

  各尺度間でpre・postごとに相関係数を算出した。結果Table 2のとおり、pre・postごとにおおむね正の相関関係が見られた。しかし、preの能力の社会的位置づけと社会基準否定的自己評価感情、個人基準肯定的自己評価感情と個人基準否定的自己評価感情で、postは社会基準否定的自己評価感情と積極的関与行動、授業に対する自我関与には相関関係が見られなかった。おおむね正の相関が見られたことについて、自己効力感や楽観性、自己評価感情は、互いに影響を及ぼし合いながらも、学習意欲に影響を与えることが示唆された。

 preとpost違う相関関係の結果が見られたことについて、授業前後での考え方の変化があった為ではないか。坂野・東條(1986)によると、自己効力感が高い場合、人は一般的で社会的な場面において自分の行いを高く評価する傾向にあり、それらを測定する下位尺度として、能力の社会的位置づけを挙げている。また、原田(2014)によると、個人基準肯定的自己評価感情は自分の基準で肯定的な評価を表す項目、個人基準否定的自己評価感情は自分の基準で否定的な評価を表す項目、社会基準否定的自己評価感情は社会における基準で否定的な自己評価を表す項目で構成される下位尺度であるとしている。さらに、真田ら(2014)によると、積極的関与行動は発表や応答に関する項目、授業に対する自我関与は授業に対する興味や関心を表す項目で構成される尺度であるとしている。つまり、ドリームマップ授業を受ける前では、社会に出た場合や世間一般基準で考えた時に、自分の評価が低いと、授業中の発表への意欲や授業に対する興味が低くなっていたが、ドリームマップ授業を受けたことによって、社会基準で自分の評価が低くても、授業中の発表への意欲や授業に対する興味などには影響を与えなくなったと考えられる。また、ドリームマップ授業を受けたことによって、自分に対しての肯定的な評価を付けると、否定的な評価も一緒に付いてくると考える様になり、自分の能力は社会的に高い位置であると認識しても、社会的には否定的な評価を付ける様になってしまったと考えられる。このことは、ドリームマップ授業によって自己としっかり向き合った事によって、自分を否定的に評価する内容が授業前よりも増えたのではないかと考えられる。



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