3.教師の指導
3−1. PM理論における指導行動
教師は日頃,子どもに対する指導をどのように行っているのだろうか。ここではまず,教師の指導行動研究について整理していく。
教師の指導行動の多くは,PM理論に基づき研究がなされている。PM理論とは,教育現場に限らず,企業など多くの現場でリーダーシップを「P機能(目的達成機能)」と「M機能(集団維持機能)」に分けて考えるものである。この理論において,リーダーシップをPM型,M型,P型,pm型の4類型に分けて検討するとPとMの相乗効果によってPM型のリーダーシップの高い効果が報告されている。三隅・吉崎・篠原(1977)は,リーダーシップの行動特性を教育現場において考え,教師の指導行動を「P機能(目的達成機能)」と「M機能(集団維持機能)」との2つに分けられると捉えた。三隅・矢守(1989)は中学校担任教師を対象に調査を行い,P機能は「生活学習における規律・指導」,「授業における厳しさ」,「学級活動促進」,「熱心な学習指導」の4因子,M機能は「配慮」,「親近性」の2因子となること報告した。またスクール・モラールに対して,PM型,M型,P型,pm型の順に効果があることがわかった。坂本・内藤(2001)は,教師の指導行動が児童と教師の人間関係のあり方や学校への適応に与える影響を明らかにすることを目的として,PM指導行動,自己開示,担任教師への信頼感,スクール・モラールの関係を検討した。この研究ではPM指導4類型の効果は児童から教師への信頼感に対しても認められた。そして特にM指導行動の認知が重要であることが示され,そのプロセスとして,M指導行動の認知から教師への信頼感,スクール・モラールへ影響が及ぼされるというモデルが示された。
このように,PM指導行動はスクール・モラールやその他の要因に影響を与えていることがいえるだろう。
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