3.教師の指導


3−2.生徒指導

 文部科学省(2010)は「生徒指導とは,一人一人の児童生徒の人格を尊重し,個性の伸長を図りながら,社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育的活動」と述べており,「すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよい発達を目指すとともに,学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く,充実したものを目指す」と示している。

 加藤・大久保(2009)は調査期間中に荒れが問題化し収束に向かった中学校1校の生徒を対象に,学校生活への感情などをたずねる質問紙調査を行い,荒れが問題化していない中学校と比較して検討した。また対象の中学校の教師に対して面接を行い,荒れの収束過程で指導にどのような変化があったか検討した。すると生徒指導に関して,その指導が当該生徒に対して持つ意味だけでなく,他の生徒や保護者に対してもつ意味が考慮された間接的な関わりが多用されるようになったことがわかった。さらに実践的には指導を教師−当該生徒との関係の中だけで考えるのではなく,それを見ている第三者まで含めた三者関係のなかで考える必要があると示された。

 金子(2014)は生徒指導を行う教師と指導された生徒をつき合わせ,それぞれにインタビューを行い,教師はどのような関わり方をして,生徒は教師の関わりをどのように評価しているのかを事例から検討した。その結果,@教師が生徒の問題行動ばかりに注目するのではなく,生徒が問題を引き起こしていないときや,学校内の活動に取り組めている非問題時に着目した指導が有効であることA生徒が問題を引き起こす問題のある時と,問題を起こしていない非問題時にあるときの教師の関わり方を明確に使い分ける必要性があることB学校の立て直しや学校雰囲気の維持にとっては,特別なことを実施するというよりは,教師が生徒に取り組ませたいと考える目標を設定し,それを学校内で徹底させていくことであることが示された。

 杉田・吉浪・藤原(2016)は中学校を対象に協同学習の手法を取り入れ,生徒指導の三機能を生かした授業づくりを行うことで学び合いを深めた生徒の思考力・表現力を育成するかを検討することを目的に調査を進めた。生徒指導の三機能(文部科学省,2010)とは,「@児童生徒に自己肯定感を与えることA共感的な人間関係を育成することB自己決定の場を与え,自己の可能性の開発を援助すること」である。この研究では,生徒指導の三機能を生かした授業づくりの授業実践の効果が示唆された。

 岡崎(2018)は荒れる中学校や荒れる生徒の事例をもとに,荒れる学校での問題行動や荒れる生徒に対する教師の対応を分析し,今後「チームとしての学校」における生徒指導のあり方の一端を提示することを目的として検討した。その結果@児童生徒一人ひとりの心情を的確に把握することA児童生徒集団の関係性を分析して,そこから指導プランを立てることB児童生徒に関する情報や発見は,記録に残し,教職員全体で共有することC児童生徒の行動の背景(理由・原因)を的確にアセスメントすることの4点に留意した生徒指導が大事であることが見出された。

 以上のことから教師は日常場面から授業場面に渡って生徒指導が行われており,様々な場面で生徒指導の効果が明らかになっている。また生徒指導を行う際は,やみくもに指導を進めるのではなく,子どもの行動や言動の背景,人間関係などを詳しく分析した上で指導をすることが重要であることがわかる。



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