3.教師の指導
3−3.全体指導
土屋(2014)は中学校を対象に,教師,問題行動生徒,一般生徒という学級集団を構成する人間関係から,生徒の荒れや個々の困り感に対する支援介入策を友人関係や集団の中に見出した。そして,教師が得た見方で生徒に関わることで,生徒が安心して学ぶ場を構築できるかを探り,その実践により教師の力量形成につながるかを検証することを目的に調査をした。その結果,教師の意識の変化や力量形成の向上が見られ,また生徒の学級に対する意識や学習への意欲,友人関係にも変化がみられ,生徒が学習に対して意欲的に取り組むようになったことが明らかになった。
鈴木・赤坂(2016)は教師と良好な関係をつくることに成功しているとみられる中学校教師の日常的な指導行動を分析した。すると,生徒と良好な関係性をつくり,いじめが起きにくい学級をつくる教師は集団づくりの導入期において,多くの手段を用いて生徒と関わり生徒理解に努め,学習や生活などのルールの徹底を通して生徒に対して「あなたはこの場所にいてもいいんだよ」と安心感を与えるための指導行動をしていることが示された。この安心感を与える教師の指導行動により生徒と信頼関係ができ,いじめの起きにくい学級づくりにつながると考えられた。
このように教師は意識的に集団に働きかけることを通して教師と生徒の良好な関係づくりにつながる可能性が示唆される。
3−4. 個の指導
八川・岡田(2017)は中学校を対象に,課題の大きいある1クラスにおいて,個別の課題を抱える生徒の変容を促すために,組織的に毅然とした治療的生徒指導を続け,平行して生徒を多面的,総合的に理解しながら,粘り強く生徒たちと関わりきった。保護者との継続的な連携も重要であるとし,家庭訪問を通じて,生徒と保護者と関わりながら指導をする実践を行った。その結果,個に応じた指導が継続する粘り強い取り組みと一人ひとりのよさを見つけ,役割と関わりを仕組む取り組みを継続することで指導生徒・保護者との信頼関係を築き,生徒指導上の課題を解決し,個別に生徒が変容した。
田神(2018)は高等学校における生徒の問題行動に対して,文部科学省の調査結果の分析と自身の体験をもとに今後の生徒指導について考察している。その際,生徒間や対教員の人間関係の問題,生徒の学校の指導に対する不満や基本的な生活習慣の乱れなど,個々の生徒の実態に即した個別指導が今の学校に求められていると考え,生徒一人ひとりの個性を尊重し,それを伸ばすことが重要であると述べている。
以上のように個別の指導によって生徒一人ひとりの実態を把握し,個々に応じた指導をすることで,生徒の問題解決や生徒とのより良い関係づくりにつながることがわかる。
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