1. 各教師の認知について
1−8.教師用RCRTの結果に基づくインタビュー
D教師は「扱いやすい(指導しやすい)・扱いにくい(指導しやすい)」「真面目・いい加減」を軸に生徒を認知しているといえる。その軸を基にしてZクラスの生徒を振り分けた結果,「指導が難しい生徒」(2名)と「指導が難しいと感じない生徒」(2名)がどこに位置しているのか見ながら,それらの生徒について尋ねた。また,他教師が捉えた「指導が難しい生徒」(4名)と「指導が難しいと感じない生徒」(1名)についても尋ねた(Table9)。
D教師は教師−生徒の関係性による距離感の取りづらさや生徒の反応を予測可能かどうかが指導の難しさに影響していた。例えば,勤勉でも自己開示せず,性格が捉えがたい生徒は距離感を縮めにくく,生徒の反応も予測不能であるため,指導の難しさに影響していた。同様に,優等生や繊細な生徒,頑固な生徒,など不如意な行動をとる生徒は苦手な部分や指導が難しい部分もあった。それに対して,比較的いい加減で,完璧でない生徒は反応が予測可能なため指導がしやすい。他にも,生徒への対応が予測可能である,苦手意識がない,関わる機会が少ない,という条件があると指導のしやすさに影響していた。さらに指導が難しい部分があっても生徒への長所をたくさん認知し,苦手さを感じていないと指導が難しいと感じないことがわかった。
これらのことから,以下のことが考えられる。D教師は真面目な生徒で良い生徒だと認知していても,その生徒の反応が予測不能であると指導が難しいと感じると思われる。一方で苦手意識をもっていない生徒,関わる機会が少ない生徒は指導が難しいと感じていないことが示唆された。また指導に困難性を感じる部分があっても,多くの長所を認知し,苦手意識がないと指導が難しいと感じないことが考えられる。D教師は生徒との距離感や生徒の反応を意識しながら指導をしていると考えられる。
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