1. 各教師の認知について
1−6.教師用RCRTの結果に基づくインタビュー(C教師)
C教師は「自己中心的・自己中心的ではない」「ポジティブ・ネガティブ」を軸に生徒を認知しているといえる。その軸を基にしてZクラスの生徒を振り分けた結果,「指導が難しい生徒」(2名)と「指導が難しいと感じない生徒」(2名)がどこに位置しているのか見ながら,それらの生徒について尋ねた。また,他教師が捉えた「指導が難しい生徒」(4名)と「指導が難しいと感じない生徒」(1名)についても尋ねた(Table7)。
C教師は,生徒から受け入れられていない感覚を覚えるといった,生徒からの抵抗感が指導の難しさに影響していた。そのため,生徒からの抵抗感の排除は指導のしやすさに影響していた。具体的には長期的な関わりによる生徒理解,指導の見通しが可能となることや,生徒との多くの時間の共有や早期的な関係づくりによって,親密性につながることが指導のしやすさに影響していた。またC教師の担当教科が得意で,真面目で勤勉性のある生徒や状況判断力のある生徒も指導のしやすさにつながっていた。他にも,指導が難しいと感じにくい生徒の中には,部活の顧問でない生徒など授業外で不干渉な生徒が挙げられた。さらに,C教師は偏屈な子には声かけの難しさを感じているが,生徒と関わりを持ち,性格を理解しつつ,試行錯誤しながら対応の仕方を変化させ柔軟性をもった指導を行おうとしていた。
これらのことから,以下のことが考えられる。C教師はY中での教師経験年数が1年目であるため,生徒への積極的な関わりを促進し,日々生徒理解に努めていると考えられる。生徒理解や関係づくりに努めることで,生徒からの抵抗感が排除され,指導がしやすくなることが示唆された。よって,C教師にとって生徒と関係づくりを行うことは,生徒理解や指導の見通しの可能といった意味があると予想された。中学校教師において,若い教師ほどカウンセリングマインドを重視して子どもを理解しようとする態度がみられるが,それ以上の教師は言葉を使って話しかけたり,気持ちを和らげたり等の関わりをしていることが報告されている(青木・小河,2010)。C教師は教師経験年数が7年目と比較的若い教師ではあるが,指導経験も積んでいるため,子どもを理解しようと努めながら,子どもの気持ちを和らげるような関わりをしようとしていると示唆された。インタビューの中でも,C教師は指導が難しい子どもに対して,「気持ちをほぐしてから関わるのが大事」と述べていた。このようにC教師は日々,試行錯誤しながら生徒への対応の仕方を考えて行動していると考えられる。
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