2.問題を抱える子ども
2−1. 暴力行為
文部科学省(2018)の「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると,小・中・高等学校における,暴力行為の発生件数は63325件である。その内容として,「対教師暴力」は8627件(前年度8018件),「生徒間暴力」は42605件(前年度39484件),「対人暴力」は1306件(前年度1352件),「器物損壊」は10787件(前年度10590件)である。文部科学省(2011)は,暴力行為の増加の要因について,「児童生徒の成育,生活環境の変化,児童生徒が経験するストレスの増大」,最近の児童生徒の傾向として,「感情を抑えられず,考えや気持ちを言葉でうまく伝えたり人の話を聞いたりする能力が低下していること」などを挙げ,同じ児童生徒が暴力行為を繰り返す傾向などを指摘している。その背景には,「規範意識や倫理観の低下,人間関係の希薄化,家庭の養育に関わる問題,あるいは映像等の暴力場面に接する機会の増加やインターネット・携帯電話の急速な普及に伴う問題,若年層の男女間における暴力の問題など,児童生徒を取り巻く家庭,学校,社会環境の変化に伴う多様な問題がある」と述べている。
このように,子どもの暴力行為の件数は依然として深刻な状況であると考えられる。また暴力行為の背景には子どもを取り巻く周りの環境での複雑な要因が関係しているといえる。
2−2. いじめ
文部科学省(2006c)は,いじめの定義を以下の通りに定めている。「いじめ」とは,「児童生徒に対して,当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって,当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」である。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。
文部科学省(2018)の「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると,小・中・高等学校及び特別支援学校における,いじめの認知件数は414378件である。いじめの発見のきっかけは,「アンケート調査など学校の取組により発見」が52.8%(前年度51.5%)で最も多い。いじめられた児童生徒の相談の状況は「学級担任に相談」が79.5%(前年度77.7%)で最も多い。
以上のことからわかるように,いじめの認知度は増えており,解決すべき問題の一つであるといえる。またいじめが発見されたきっかけとして,学校の取組が過半数を占めており,いじめに対する学校の取組がいじめの認知に向けて重要であることもいえるだろう。
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