【問題と目的】
4.家族


4−1.家族類型の変遷

 道徳科で教えるべき価値項目の1つに「家族愛・家族生活の充実」という項目がある。近年の家族類型は,従来の核家族・3世代家族だけでなく,多様に変化してきており,総務省(2017)によると,「3世代世帯」は2010年の時点で全体の7.1%,2015年では5.7%であり,2000年の10.1%から減少し続けている。「夫婦と子供から成る世帯」も同様の傾向が見られ,2000年の31.9%から減少し続け,2015年の調査では26.9%を記録している。核家族世帯も,2000年の58.3%から減少し続け,2015年には55.9%となっている。
 一方で,「ひとり親と子供から成る世帯」は2000年から増加し続けており,2000年の時点で7.6%であったものが2015年には8.9%になっている。このうち,女親と子供の組み合わせは2015年の時点で7.6%であり,男親と子供の組み合わせは1.3%である。女親は2000年の6.4%から増加し続けており,男親は2010年と同じ割合であるが,2000年の1.1%と比較すると,やはり増加している。また,単独世帯や夫婦のみの世帯も2000年から増加し続けている。
 このように,近年の家族類型は子どもを持たない家庭や,一人親であるという家庭が珍しくないものとなっている。
 さらに,近年増えてきた多様な家族の一例として,同性同士で家族を成すことが挙げられる。牟田(2018)は同性婚・同性パートナーシップなどに目を向け,日本以外の諸外国では同性婚やパートナーシップ制度が容認されてきたことで,同性カップルで子どもを持つことも珍しくなくなっていると述べている。同性カップルが子どもを持つ手段については「以前の異性パートナーとの間の子」や「養子」だけでなく,代理母出産や精子バンクなど「生殖技術を利用」することもあり,従来の「子どもを持たない,持てない」という認知を改める必要があるという。
 つまり,近年の家族類型は多様であり,「家族とはこういうものだ」と一概に提示できるものではない。よって,家族を扱う単元では,より多様な家族観・価値観を提示することが重要であると予想される。



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