【問題と目的】
4.家族


4−2.家族愛

 道徳の授業で家族愛を扱うことに対して,次のような懸念がなされている。
 中村・藤井(2016)は,家族の成り立ちが「従属性」を基盤としていると主張し,従属的状況にある子どもに,教師が「家族」や「家族愛」といった価値を教えることで,家族関係に何らかのトラブルを抱えた子供は声を上げることができず,追い詰められてしまう危険があると指摘する。
 また,中村ら(2016)は「『家族』や『家族愛』という概念」は時代と共に変化するものであり,家族観の多様化は,家族愛の多様化と同義であるという。近年は「施設で育てられた子供」や「虐待を経験した子供」が存在することが珍しくない社会であるため,「父母や祖父母によって家族であれば誰にでも与えられる無償の愛としての家族愛」のみを前提とした道徳の授業は困難であると述べている。
 つまり,家族愛も家族類型の変化と共に多様化しており,家族愛を感じられない家庭に育つ子どもも存在するため,家族愛に関する単元では,教材や教師に配慮が求められると思われる。また,家族のとらえ方は,個々によって様々であると言える。



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