【問題と目的】
2.道徳
2−4.道徳科の特徴
前節で,その根底に多様な価値観の育成と反する疑いが指摘された道徳科だが,その特徴や目的は次のように示される。まず,道徳が教科科したことで「道徳の時間」と,どのような点が異なるのかについて述べる。
本田(2018)は,学習指導要領の主な変更点として,次の6点を挙げている。@道徳教育の目標の設定・整理A道徳教育の内容に関しての見直しB指導法に関しての改善C検定教科書の導入D評価の追加E教員免許・大学教員養成課程の改善,である。
このうち,Aにおいて,内容項目に関する記述がある。道徳科で教える内容について「内容項目ごとにその内容を端的に表すキーワード(『正直,誠実』『公正,公平,正義』など)を明示すること」で発達段階によって求められる指導の違いをより分かりやすく示した,というものである。前書きの繰り返しになるが,山口(2018)によると,道徳科の内容項目とは,「具体的に提示された道徳的諸価値」のことであると言って差し支えないものである。つまり,先に挙げていた価値項目とも同義のものであると解釈できる。また,「内容を端的に表すキーワード」についても「道徳的諸価値」とほぼ同義であると解釈できる。
ところで,文部科学省(2018)によると,道徳科の目的は「物事を広い視野から多面的・多角的に考え」つつ,自己理解を深め,「道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度」を育成することである。よって,道徳科の授業において求めるものは「多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,人間としてよりよく生きるために道徳的価値に向き合い,いかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢」であるという。
つまり,道徳科の授業では,多様な価値観にふれながら,自己の価値観を獲得することが求められていると言える。
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