1.ほめについての概要
1−4.ほめを構成する要因の関係
青木(2010)は,「ほめられる」という場面は,ほめられたことがら・ほめられ方・ほめられた時期・ほめられた活動をするに至った背景・ほめられた場面・ほめられた側・ほめられた相手などのさまざまな要因の組み合わせにより構成されていることを述べている。つまり,たとえばほめられた側・ほめられ方・ほめられた場面の組み合わせであると,青木(2005b)がお手伝いをする場面において,就学前の子どもは「すごい」「上手」などの賞賛のほめを,小学校1年生の子どもは「ありがとう」などの愛情・感情のほめをポジティブに受け止め,自由時間における作業量が多くなることを明らかにしている。
これまでにほめられ方に注目した研究が多く行われているが,たとえば自己肯定感が向上すると示されたほめ言葉を同じように用いても,容易な課題をこなせたときと難しい課題をこなせたときでは効果が異なることが予想される。また自尊感情の向上が見込まれる内容についてほめたとしても,すぐにほめられるのと時間をおいてからほめられるのでも違いがみられると考えられる。このように,ひとつの要因だけでほめの効果は決定しないといえる。
さらに青木(2005a)は,ほめが単に相手を賞賛するだけではなく多様な機能を持っていることや,場面や目的,相手,また相手の反応によって用いるほめ言葉を決定しなければならないと提唱している。たとえば親が小さな子どもに対して,やる気を持続させることを目的としてほめる場合,子どもが成長した点,やろうとしている意欲などの好ましい適切な行動に注目して「頑張っているね」「何も言わなくても自分でやってくれるから自慢したい」とほめることで,認められたと感じ安心できるため効果的であるという(鈴木,1994)。
では,どのような要因が大きく関わってくるのであろうか。青木(2011)は,小学校1年生に対し,ほめられたことで動機づけが高まったエピソードについて尋ねるインタビュー調査を行ったところ,もっとも褒められる相手の重要度が高いことを明らかにした。さらに,ほめられる以前の子どもとほめられる相手との関係性が影響を与えていることを示している。この研究は小学校1年生の児童を対象にしたものであるが,年齢を重ねるにつれ対人関係も広がっていくうえで,こういった相手との関係性は関連してくるのではないかと考えられる。
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