1.ほめについての概要
1−3. ほめの効果
では実際,ほめはどういった効果をもたらすのであろうか。
一般的にほめるという行為は,内発的動機づけを高めるための手段として,おもに子育てや学校教育の場面で多用されている(青木,2005a)。というのも,ほめは年齢を問わずあらゆる状況で使用されるものであるが,幼児や小学校低学年のように年齢の低い子どもにとっての影響が大きいとされているからであり,その世代を対象とした研究が数々行われている。
文部科学省(2003)によると,「ほめられたりしかられたりした経験の多い小中学生には,生活習慣や道徳観・正義感が身についているものが多い」と報告されている。ほめられたりしかられたりした経験が「よくある」と回答した児童生徒のうち,生活習慣がある子どもが43%,道徳観・正義感がある子どもが36%と,いずれも最も高い割合を示している。教育の観点からしてもほめは子どもの能力を伸ばす重要な役割を果たしていることがうかがえる。また笹川・藤田(1992)は,小学校低学年まではほめられたり叱られたりした経験が多く,そのうちほめられた経験が多かった学生の自己効力感が高かったことを報告している。このように,ほめられた経験はその後の発達に良い影響を与えているといえる。
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