3. 対人ストレスコーピング


 ストレスへのコーピングは人それぞれではあるが,対人ストレス場面についてのコーピングに関して加藤(2000)は十分な信頼性と妥当性のもと,対人ストレスコーピング尺度を作成し,「ポジティブ関係コーピング」「ネガティブ関係コーピング」「解決先送りコーピング」の3因子を抽出した。ポジティブ関係コーピングは「相手のことをよく知ろうとする」「相手と積極的に話をするようにする」というような,対人ストレスに対して積極的にその問題を解決していこうとする対処方略であり,ネガティブ関係コーピングは,「相手と関わり合わないようにする」「相手と話をしないようにする」というように,その問題を遠ざけ,そのような相手との関係性を破棄するような対処方略である。解決先送りコーピングは「気にしないようにする」「なんとかなると思う」「こだわらないようにする」という具合に,成り行きに任せたり,自分から働きかけたりはしないような方略である。この解決先送りコーピングは,Lazarusらの問題解決・情動焦点対処のどちらにも属しない新たな対処方略として加えられた。加藤(2001)では対人評価(脅威・重要・対処効力感)によってそれぞれの対人コーピングの頻度の高低が明らかにされている。
 対人関係,特に友人関係においては相手との意見の食い違いや,価値観の違いなどから様々なストレス場面が想像される。中島ら(2010)はストレスフルなイベントを抱えた際,その個人の自己評価が脅かされることをLazarus&Folkman(1984)の認知的評価論を用いて説明している。そして,自己評価が脅かされる場面でも,各々の持つ自己観によって自己評価の維持の方略は異なるという。ここでの自己観とは,文化的自己観(相互独立性−相互協調性)を指している。自己評価の維持のための対処法略(=コーピング)が各々の相互独立性−相互協調性によって規定され得るという。



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