3.過去のとらえ方
3−3.過去のとらえ方尺度を用いた研究
これまで,石川(2013)が作成した過去のとらえ方尺度を用いて,目標意識との関連・精神的回復力との関連等が研究されてきた。石川(2014)は,目標意識との関連について,現在において過去を過去として受け止め,現在や未来につながるものとして位置づけることができた場合,将来への希望や将来目標を持つことができることや,過去に対して否定的な認識や態度を持っている場合,将来への希望を持ちにくいことを明らかにしている。つまり,過去のとらえ方の違いによって,未来への展望に違いがあるということである。また,石川(2017)は,精神的回復力との関連について,過去に対し受容的な態度をもち,過去を現在や未来と連続しているものとしてとらえている場合,様々なことにチャレンジしていこうとする特性を持っていることを明らかにしている。さらに,石川(2009)は,成長への志向性と現在の充実感との関連についても研究しており,過去を否定したり,断ち切ったりするのではなく,しっかりと肯定的にとらえることが,成長への志向性と現在の充実感を高めることを明らかにしている。このように,過去のとらえ方の違いによって,未来への展望や個人の特性に違いが見られるのであれば,現在の認識や行動にも違いがあることが考えられる。
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