5.幸せへの動機づけ


5−1.幸せへの動機づけについて

 人が幸せと感じる生き方にはそれぞれ個人差がある。浅野他(2014)は,快楽追求と幸福追求という二つの観点から,個人の日常生活における動機づけを測定するHedonic and Eudaimonic Motives for Activities尺度の日本版を作成した。快楽追求とは,自己の心地よさを求めた動機づけであり,幸福追求とは,自分自身の存在を最大限に生かすことを目指した動機づけである。これらは,現在において何を目的として行動しているかを見ることができると考えたため,本研究における現在の認識として取り扱うこととする。

5−2.幸せへの動機づけに関する研究

 南(2015)は,若者の将来や今に対する価値観と幸せへの動機づけとの関連を明らかにしており,「今が楽しければそれでよい」といった「将来無関心」と「自己の心地よさを求めた動機づけ」である「くつろぎ追求」の間に正の相関,「将来無関心」と「自分自身の存在を最大限に生かすことを目指した動機づけ」である「幸福追求」の間に負の相関があることを述べている。このことから,未来を重視しない傾向のある若者は自己の心地よさを求めているが,そういった傾向のない若者は自分自身の存在を最大限に生かすことを求めていると考えられる。このように,将来や今に対する価値観と幸せへの動機づけに関連があるのであれば,過去に対する価値観,いわゆる過去のとらえ方にも関連があることが考えられる。そのため,本研究では,過去のとらえ方と幸せへの動機づけの関連を見ていくこととする。 



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