4.過剰適応
4−1.過剰適応について
我々は学校や職場など,他者と共に過ごす様々な場面で,周囲を気にかけながら生活をしている。石津(2006)は,過剰適応とは「環境からの要求や期待に個人が完全に近い形で従おうとすることであり,内的な欲求を無理に抑圧してでも,外的な期待や要求にこたえる努力を行うこと」であると述べている。また,適応は内的適応と外的適応に分類されているが,「行き過ぎた適応」は過剰適応と呼ばれ,青年期以降に様々な問題を露呈する可能性があると述べている(桑山,2003)。「周囲を気に掛ける」ということは,SNS上でも言えることである。SNS上での他者とのコミュニケーションは相手の顔や表情の見えないものであるが,そこには現実と同じような人間関係が構築されていることから,このような現象も起こりうると考える。特にTwitterやInstagramでは,自分のつぶやきや投稿した内容がリアルタイムで他者の目に入るものであり,日記などとは違い不特定多数の人が見ることになる。SNS疲れについて聞き込み調査をした番組では,「投稿は様々な人に見られていて,言いたいことがあっても人からどう思われるかを気にして隠してしまう」といったことが回答として見受けられる。これらのことから,周囲を気にかけて,自分の気持ちを抑えて本音を隠してしまうといった過剰適応の傾向が高い人ほど,SNS疲れの程度も強くなると考える。
4−2.これまでの過剰適応に関する研究
石津・安保(2008)は,過剰適応をしている子どもには, 適応感に覆われ,周囲からは判断しにくい個人的ストレスが存在している可能性があると考えている。過剰適応により他者の顔色や反応に敏感になりすぎるあまり,それがストレスとなり心理的な健康状態に影響してくると言えるだろう。他者への意識がストレスとなる現象は,総務省(2013,2014)の調査でも回答として見受けられる。例えば,「他人の充実した日常を見て,自分と比較してしまう」といった回答があり,このような傾向がSNS疲れと関連していると考えられるだろう。また,尺度について,青年期前期とは中学生時(12歳〜15歳)とされているが,石津(2006)の青年期前期過剰適応尺度は作成の段階で大学生にも回答をさせているため,本研究でも大学生を対象にこの尺度を使用することとした。
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