4. 役割について


4-1.役割の種類について

 新井・松井(2003)はサークル集団の多くは,原則として学生の自主的な意志に基づいて結成され,構成員は学生であり,加入も運営も学生の自発的意思決定に基づいているという特徴を持つと述べている。大学の部活やサークルで与えられる役割といっても,様々なものが考えられる。役割といわれて思いつくものとして,その集団を率いていくとされる“代表”,“キャプテン”,“副代表”,“会長”などの幹部的な役割が挙げられる。この他にも,“音源係”,“隊列長”,“会計”“マネージャー”などある集団特有の役割など様々な役割が存在する。

 では,役割を与えられるということはどういうことを意味するのか。吉川(2016)はリーダーシップに着目して研究を進める中で,「リーダーの資質がなければリーダーにはなれない。リーダーの資質を持っていなければリーダーには相応しくないと考える」と述べている。こうしたことから,役割を与えられるということは,その役割は与えられた人にしかできない,与えられた本人が適任であるとして与えられたものであるということであると言える。役割を与えられたものは「自分が責任を持ってこの役割を果たさなければならない」という責任感も抱くだろう。また,こうした不特定多数の中から選ばれることで,自分自身の価値や存在の意味も感じることが出来ると考えられる。そのため,このように役割を与えられるということは,「自分自身に価値がある」と捉える自尊感情との間に関連があることが予想される。そのような中で,リーダーのような役割を与えられる人物にはどのような特徴があるのだろうか。

4-2.集団を率いていく役割を持つ人物の特徴

 リーダーシップ理論では当初,リーダーシップは個人の資質や行動によるものだとする立場が主流だったが,昨今では他者との関係や状況に応じて発揮されるものだというものになってきている(吉川,2016)。つまり,代表やキャプテンなどのリーダー的な存在になる人物は,集団内の仲間との関係性をうまく測れていたり,メンバーに寄り添うことができる人物であるということが考えられる。そのため,仲間からの信頼も厚く,関係性もうまく測れているという点から,他者との良好な関係が特に測れている人物であるといえる。こうした点から,リーダー的な存在の人は,より一層自分自身に価値を感じられたり,他者から必要とされているということを実感できると考えられる。つまり,リーダー的な役割を与えられた人物は,他の役割を与えられた人物よりも自尊感情が高まりやすいと考えられる。



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