3. 他者志向的動機


3-3.他者の存在が動機づけに及ぼす影響

 現在,他者志向的動機に関連する研究はいくつか行われている。伊藤(2006)は,日常の動機づけにおいては,他者が課題遂行に対する動機づけの重要な役割を果たす状況は多く認められると述べている。しかし,そうした他者からの応援や他者の存在をどう捉えるかは人によって異なる。伊藤(2006)は,他者志向的に動機づけられている場合では,他者からの期待に対して積極的に応えようとすることが予想されるが,自己志向的に動機づけられている場合では,このような期待やプレッシャーに対して否定的に反応することを予想している。このような他者志向的動機・自己志向的動機の高低による捉え方の違いによって,他者からの言葉がけや期待をプラスに捉えられる人もいれば,マイナスに捉える人も存在する。「自分は誰かに期待されている」と捉えるか,「こんなこともできないのか」と捉えるかといった,他者からの言葉がけの捉え方の違いによって,自尊感情にもなんらかの影響を与えている可能性が考えられるため,これらの動機の高低と自尊感情の変化について検討を行う。

3-4.他者志向的動機と自尊感情の関連

 さて,真島(1995)によると,他者志向的動機は,「自己決定的でありながら,同時に人の願いや期待に応えることを自分に課して努力を続けるといった意欲の姿」と定義されている。そのため,自分の考えや自分のためでありながら,“他者のため”と言うことによって,「今自分が行っていることは人の役に立っている」「誰かのために頑張る自分は価値のある存在である」と捉え,自分には価値があり尊敬されるべき人間であると考える自尊感情を高めている可能性があると示唆される。さらに,集団に所属すると,世代交代がある。世代交代をすると,自分たちの世代がその集団の主な役割を果たしていく世代になると同時に,個人に対して代表やキャプテンなどの役割が与えられることがある。こうした幹部的な役割のほかにも様々な役割が存在する。



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