3.役割の有無及び部活の所属・無所属による自尊感情の変化




 役割の有無及び部活やサークルなどの集団への所属・無所属によって,「自尊感情(事前)」と「自尊感情(事後)」の得点に変化が見られるかどうかを検討するため,2要因分散分析を行った。その結果,部活の所属・無所属の主効果が見られ,部活・サークルに所属している人の方が自尊感情の得点が高かった。このことは,世代交代前,世代交代後関係なく部活やサークルに所属している人の方が,自尊感情が高いことを示している。高田(2015)は,岡田(2002)の現代青年の中には,親密な友人関係から退去する傾向を持つふれあい恐怖心性を持つ学生がいるという指摘から,近代大学生の中には,人と深く関わることを望まない学生がいると述べている。つまり,部活やサークルといった集団に参加しない学生というのは,自尊感情に影響を与えているとされている他者との関わりに積極的ではない学生であることが予想される。そのため,部活やサークルに所属していない学生よりも所属している学生は自尊感情が高いという結果になったのだと考えられる。また,本研究では明らかとはならなかったが,安藤(2000)は,集団に所属することが自尊心の重要な源泉となることを指摘している。つまり,部活やサークルという集団に所属することが,自尊感情に影響を与えているということが考えられる。特に,大学においては,特定のクラスがなく,授業によって様々な人と関わるため,特定の集団で過ごすことが少ないが,部活やサークルといった集団は大学においては,より一層大きな存在となり,影響を与えているのではないだろうか。このことから,仮説1は支持されなかったが,自尊感情と部活・サークルの所属に関係があることが示された。
 一方で,役割の有無と「自尊感情(事前)」「自尊感情(事後)」に関しては主効果,交互作用ともに,有意なものが見られなかった。このことから,自尊感情の変化に,役割の有無はあまり関わっていないことが示された。よって,仮説2は支持されなかったといえる。新井・松井(2003)は,サークル集団の多くは,原則として学生の自主的な意志に基づいて結成され,構成員は学生であり,加入も運営も学生の自発的意思決定に基づいているという特徴をもつと述べている。こうしたことから,集団内の役割の決定も学生同士で行っていることが考えられる。しかし,学生同士とはいえど,同学年の中で話し合って決めるのか,はたまたじゃんけんなどの運まかせで決めるのか,それとも先輩に決めてもらうのか,自主的に立候補するのかなどと役割決定の方法も様々である。そのため,こうした役割の決定の仕方によっても自尊感情に影響を与えるか与えないかが変化してくる可能性がある。例えば,先輩から役割を与えられる場合は,先輩から自分の能力を認められてこの役割を与えられていると感じ,自尊感情を高めることに影響を及ぼす可能性がある。しかし,じゃんけんなどで決まり,半ば無理矢理役割を与えられたのであれば,そうした役割の有無が自尊感情には影響を与えないであろう。そのため,こうした役割の与えられ方についても検討を進める必要があるといえる。



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