2.各尺度の関連について


2−2.特性と他者志向的動機傾向の関連について

 他者志向的動機傾向は,向上心の下位尺度「意欲」と正の相関が見られた。このことは他者志向的動機傾向が高い人は「意欲」の特性得点が高いことを示している。徳岡・佐藤・森田(2015)は,「自分のためにする達成行動が,“他者のためになる”と思うことにより促進されるか,その影響は個人の特性によって異なるのか」について検討を行っている。他者志向的動機とは,他者からの期待や応援に応えようとしたり,与えられた職務や役割を全うしようとする動機づけであるため(東,1994),他者志向的動機に肯定的である,つまり,他者志向的動機傾向が高い人ほど,“他者のためになる”と意識した際,動機づけが高まりやすいと考えられる(徳岡・佐藤・森田,2015)。研究の結果,“他者のためになる”という意識を持つだけで,作業への動機づけが高まることが示されている。本研究での結果は,こうした先行研究と同様,“他者のためになる”という他者志向的動機傾向が高い人は,活動の動機づけともいえる「意欲」の得点が高くなるという結果となった。徳岡・佐藤・森田(2015)の先行研究においては,自分の作業が他者のためになるかどうかについて,事前に伝えているグループ,伝えないグループに分けて実際に作業を行っていたため,研究方法が異なる。しかし,事前に他者のためになることを伝えたグループの方が作業の動機づけが高まるというところに焦点を当ててみると,本研究の他者志向的動機傾向が高い人は「意欲」の特性得点が高いという結果は同様の結果であるといえる。本研究と先行研究の研究結果をもとに,今後の活動において「あなたが頑張ってくれることで私は助かる」などということを事前に伝えることが,作業者の意欲を高めることに繋がるのではないかと考えられる。



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