5.期待の程度


 Brain & Resse(2007)は,親の期待を高すぎると認知する事と親からの批判は後に精神疾患,神経症的完全主義や社会不安を導くとしている。親の期待と親の批判の間に正の相関があることも指摘されている。また,親の期待の高さと子どもが親の期待に応えられていると感じる達成度とのズレが孤独感を強め自己効力感を低下させることにつながることも明らかとなっている(赤星,2007)。河村(2003)は,親からの期待を感じている程度が高い場合,青年の不適応的完全主義傾向が高まることを指摘している。このように,期待の程度は内的不適応を予測するものとして扱われており,親の期待の場合は期待が高すぎると,不適応につながっていくと考えられる。

 本研究では,教師から期待を感じていた程度が期待の受け止め方に影響を及ぼしていると考える。渡部ら(2012)は,抑鬱・自己不明瞭・無気力等の内的適応に,期待を感じている程度と期待の受け止め方がどのように影響しているかを検討している。渡部ら(2012)では,期待の程度,期待の受け止め方はともに適応を説明する独立変数として扱われているが,本研究では期待の程度を期待の受け止め方を説明する独立変数として扱う。

 教師からの期待は,他の生徒と比べて自分がどうかといったことが重要であると考える。親は子ども数人と関わるのに対し,教師は学校で多くの生徒と関わっている。期待する程度や期待する事柄も生徒によって異なり,またそういった違いを生徒自身も感じているだろう。よって,教師からの期待の場合は自分がどれくらい期待されているかが重要であり,期待の程度が受け止め方に影響を及ぼすと考える。

 以上より,本研究では期待の程度が期待の受け止め方に影響を与えると考え検討する。親の期待の場合,子どもが親の期待を高く認知していると,不安が高まったり,自己効力感が下がったりしたことから,教師の期待の場合も高く認知していると負担やプレッシャーに感じると考える。期待の程度は,負担的受け止めや失望回避的受け止めに影響を与えるのではないかと推察する。



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