6.教師の指導行動
伊藤(2009)は,期待を感じていても,親が自分の好きなようにさせてくれたと感じている子どもは,期待を負担には感じていないことを示唆している。親子の信頼関係が,期待の受け止め方に影響を及ぼすことも明らかにされている(渡部・新井・濱口,2010)。このことから,親からの期待をどのように感じるかについては,親の養育態度や親子の関係が影響していると言えよう。教師からの期待の場合は,教師の指導行動や関係性が影響すると考えられる。
教師の生徒に対する関わりはとても重要であることが,これまでの研究で明らかにされている。教師と児童・生徒の関係の研究では,教師との関係が児童・生徒の学習の基盤を成し,児童・生徒の適応や人格形成にまで影響を及ぼすことが指摘されている(浜名・松本,1993;河野,1988;近藤,1994;飯田,2002)。また,生徒の学校適応に大きく関わる要因としても,日常的に直接かかわる教師と生徒の関係が重要であるとされている。「教師に対する信頼感」に焦点を当てた研究が行われ,中井・庄司(2006)は,中学生を対象に教師に対する信頼感とその規定要因について検討している。その結果,教師からのソーシャルサポートが教師に対する信頼感に正の影響を与えることが明らかとなっている。中井・庄司(2008)は,中学生を対象に,教師に対する信頼感が学校適応とどのように関連しているのかを検討している。その結果,教師に対する信頼感が生徒の学校適応に影響を及ぼしていることを明らかにしている。村上・鈴木・坂口・櫻井(2013)は,小学生を対象に担任教師に対する信頼感と担任教師の行動・態度との関連について検討している。そして,安心感や親近感などといった教師の行動や態度が教師に対する信頼感と関係があることを示唆している。つまり,教師は生徒にとって身近で頼れる存在であることが重要であると言える。教師からの期待の受け止め方においても,そういった教師の指導や態度が重要であると考える。
以上より本研究では, 教師の指導行動が教師からの期待の受け止め方に影響を及ぼすと考え検討する。親近感があり頼れる教師からの期待の場合,期待は積極的に受け止められやすく,近寄りがたく怖い教師からの期待の場合は,負担的に受け止められやすいと考える。
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