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2.障害受容


障害児をもつ親における障害の受容とは,「あきらめでも居直りでもなく,障害に対する価値の転換であり,いくつかの時間的経過を経て,障害児の出生という親個人にとっての喪失体験である状況を克服し,最終的には障害をもった子どものありのまま全てを受け入れること,それまでの過程を含むもの」である(桑田・神尾,2004)。

障害のある子どもの母親の心理に着目し,わが子の障害を受け入れていく過程は,これまでにも数多く研究されてきている。障害受容に関する先行研究を大別すると,Drotar & Baskiewicz & Irvin(1975)の段階説とOlshansky(1962)の慢性的悲嘆説,さらにはこの2つを統合した中田(1995)の螺旋系モデルが主要なプロセスモデルとなっている。

段階説とは,障害の告知を受けた後に起きる親の反応をショック,否認,悲しみと怒り,適応,再起の5つの段階に分類し,時間的経過であらわすものである。一方,慢性的悲嘆説とは,障害児を持つ親は発達の節目に周期的な悲嘆に苦しむというものであり,悲嘆の状態が正常であるとするものである。螺旋系モデルは,肯定と否定の感情が常に存在し受容に至る全過程を適応過程とみるモデルである。

障害のある子どもの母親は子育てをしていく中で,出生・就学・就職・結婚といった子どもの発達の節目ごとに,子どもの障害に対して否定的な感情が表れると考えられる。さらには,大きな出来事のみではなく,何気ない日常生活の中でも否定的な感情になってしまうきっかけがあると推察される。よって,本研究では,肯定と否定の感情が常に存在し,受容に至るという中田(1995)の螺旋系モデルの立場に立って,研究を行う。

上記で述べた障害受容に関する研究は,親の心理的変容過程についての理論的枠組みを示しているものであるが,障害受容過程における要因についても検討していかなければならない。

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