4. インタビューの発話内容による被験者の群分けと自尊感情との関連
インタビューの発話内容の特徴を分析して基準を作り,その基準をもとに調査対象者を群分けし,検討を行った。
3-1. 『相手の性格・行動に合わせる』群
このカテゴリに振り分けられた人は,インタビュアーに対して物腰穏やかに関わる人が多くいた。これより,相手に対して一定のテンションで接する人が多いのではないかということが推察される。また,友人関係に関しての発話傾向を分析した結果,「全員に対して素」と答えつつも,その中で相手によって細かく変化する様子がうかがえたり,相手による微妙な態度の違いを詳細に説明する様子が多く見られたりする傾向にあった。具体的な発話例としては,「この人には本当に素。この人にも自然な感じだけど素とまではいかない。」「この人にも素だけど、わがままとかは言わない。」などがあった。これより、このカテゴリの人は相手の性格や行動を細かく把握した上で,それに合わせて自身の言動や態度を細かく切り替えている傾向があるのではないかと考えられる。
3-2. 『相手の性格・行動と逆にする』群
このカテゴリに分類した人は,友人に接する態度として「聞き役」「しゃべる役」「ボケ」など友人関係の中で役割を意識している人が多かった。また,自分の趣味の活動をやる際はこの友人と,勉強をする時はこの友人と,といったようにその場の目的によって一緒に行動する友人を変える傾向もあった。具体例としては「相手が話してくるから聞き手に回る」「この人は勉強する友達」などである。これらより,このカテゴリの人は友人と関わる時に役割を意識し,相手と違う役割を担おうとする傾向にあること,また,友人関係の築き方についても,自分のその場その場の行動に合わせて,違う友人と行動を共にする,といったような形をとる傾向にあることが明らかとなった。
3-3. 『相手に嫌われたくない・悪い部分を見せたくない』群
このカテゴリに分類した人は,自身の性格を「マイナス思考」「ネガティブ」など否定的な内容の言葉で答える人が多かった。また,インタビュアーに対して話をする中で友人関係の中での悩みや不満を口にし始める傾向にあった。例としては「この人といると楽しいけど気を遣って精神的に疲れてしまいがち。」「この人は最近いろいろあってあたりがきつい。」などである。これらより,この群の人は自分に対してあまり自信がなく,また日頃から対人関係の中で友人の表情や気持ちの変化に敏感で,かつ友人の感情が自分に伝染してしまう傾向があり,それによって気分の浮き沈みが激しくなることで,対人関係に関する悩みにつながってしまう傾向にあると考えられる。
3-4. 『相手の反応をわきまえた上で気にしない』群
相手と自分の違いをわきまえた上で相手に性格や言動を寄せたり,逆にしようとはあまりしていない部分が見られた。具体例としては「相談する内容が違うけどテンションが変わらない。」「出している自分は似ているけど相手のタイプは結構違う。」などがある。これより,この群は人によって話す内容が少し違ったとしても,友人それぞれに向ける言動や態度にはそこまで違いがないことが示唆される。
3-5. 『相手の反応をそもそもあまり考えていない』群
このカテゴリの人は,インタビュアーに対して回答時間が長くなったり,雑談のような内容の話が長くなる傾向にあった。これより,自分が話すことによる人の反応をあまり気にせず,マイペースに振る舞う部分があるのではないかと考えられる。具体例として「人に考えながら接することをそもそもしない。」「相手にどう思われるか深く考えない。」などがあった。これらより、この群の人は基本的にマイペースな性格であり,友人と会話をする中で自分の言ったことが相手にどう受け止められるか,深く考えることがあまりない傾向にあると考えられる。
3-6. 『仲の良い友人には全員素』群
このカテゴリの人は,インタビュアーに対して緊張気味に接する様子が見られた。また,自らの性格を「人見知り」などと答えているが,友人に対しては5人全員にあまり態度が変わらない様子が見られた。「友達の中でも態度が変わる人はこの5人に上げない。」などの発話があった。これより、インタビューで挙げた友人に対してはほとんど態度が変わらないが,それ以外の友人には「人見知り」の気質が出る部分もあるのではないかと考えられる。
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