2.困難な出来事を通じた肯定的な変容
困難な出来事を通じた肯定的な変容に関する心理学研究において,心的外傷後成長 (posttraumatic growth)(以下 PTG とする)やストレス関連成長(stress related growth),利益の発見(benefit finding)逆境後の成長(adversarial growth)が最も用いられている概念であり,これらは意味づけや対処行動などを通じて生じることが明らかにされている(飯村,2016)。日本では1990年代以降ネガティブなストレスイベントを体験した後に生じるポジティブな変化に焦点を当てた研究が盛んに行われるようになった(信野,2008)。ネガティブなライフイベントと青年期のメンタルヘルスについて高校生を対象に検討した西川・小島・藤澤・友田(2018)は,レジリエンス特性がPTGを高めることを示唆した。さらにPTGを高めるためにはストレス強度が適度に高いことに加えて経験したネガティブ体験の持つ意味合いを考えるなどの認知的変化に繋がる体験の重要性を指摘している。また,長田・相澤(2018)は過去のいじめ体験からPTGの検討を行っており,PTGはただ体験をすれば形成されるものではなく,いくつかの認知的活動により信念を再構成するプロセスの結果であると位置づけている。これらの認知的変化に繋がる体験や認知的活動は重要視されているものの内容は詳細に明らかにされていない。よって本研究においては,これら認知的活動を意味づけ行動として考え,ストレス体験からみられる意味づけ,またその要因を詳細にみていく。
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