3. 意味づけ


3−1. 意味づけの定義

 「意味づけ(meaning making)」とは,「個人が主観的に極めてストレスフルであると評価した出来事に対して行われる認知的対処」「出来事が起きた意味を探求・理解しようとする認知的コーピング及びその過程」などと定義されている(浦崎・森川,2019)。類似概念である対処行動やコーピング行動もここに含まれるとし,本研究では意味づけに焦点を当てる。従来の研究ではストレスフルな体験に対し体験者が意味を見出すことで,心身の健康が回復すると報告されている(Davis,Nolen & Hoeksema,&Larson,1998)。では,ストレス体験からプラスの影響に至るまでにはどのような意味づけが行われるのであろうか。


3−2. 意味づけの種類

 宅(2005)はストレス体験に起因される自己成長感が語られるに当たって共通に見出される要因を面接調査から探索し,「ポジティブな側面への焦点づけ」,「出来事を経験した自己に対する評価」,「出来事のもつメッセージ性のキャッチ」の3つのカテゴリーに分けられる主観的な意味合いを明らかにした。また宅(2005)は同研究で,ストレスの体験領域によってこれら意味の付与のあり方や自己成長感の大きさが異なる可能性を示唆している。近年,意味づけ研究が盛んに行われているが,ストレスとなる体験をネガティブな経験(松下,2005,2008)などと統合しており,意味づけの対象となる出来事の幅が広い。上野山・岡本(2017)は意味づけ研究において,ある特定の出来事に焦点を当てたものは少ないことを指摘している。よって本研究では,ストレスイベントを失恋体験に限定し,宅(2005)の意味の付与尺度を用いてどんな意味づけが行われているのかを明らかにする。



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